第58章 *創造シルキー*
エース『あのー、ヴィル先輩って魔法が得意だから寮長になったんすよね?肌とか髪とか、パパっと綺麗にする方法ってないんすか?』
ヴィル『あんたたちも魔法士なら理解してると思うけど、殆どの魔法や魔法薬に永続的な効果はないわ。魔法で取り繕った美は、一瞬夢を見せてくれるでしょうけど..アタシは、午前0時の鐘で解ける魔法には興味はないの。偽りのない純粋な美しさを手にしたい』
魔法の鏡が認めた、"美しき女王"のようにね..と真っ直ぐで真剣な瞳に、レイラはぼんやりと見とれていた
ルーク『もし伝説の鏡が現存していたら、きっとヴィルの美しさを認めていたに違いないさ』
ヴィル『...そうね』
『...?』
てっきり"当然"と言うかと思われたヴィルは、余り覇気のない声で一瞬悲しそうに視線を落とした
ヴィル『少し話しすぎたわ。全員部屋に戻りなさい。寝る前にスキンケアをするのを忘れないように!』
『『『は、はい..』』』
オンボロ寮・自分達の部屋
エースたちと分かれたユウたち3人は、部屋へと戻ると寝る準備を整えていた
グリム『ふなぁ~。まだ合宿1日目だってのに、もうクタクタなんだゾ~』
ユウ『出演者のみんなは尚更だろうね』
『これからが大変だね..』
グリム『これもツナ缶富豪のため..あいつらにはぜってー優勝してもらうんだゾ』
?『~~~♪...~~~♪』
ふと、オンボロ寮の外から誰かの歌声が微かに聞こえてきた。その声を聞いたグリムとレイラの耳が反応するようにピクッと窓の方へと傾く
グリム『ん?なんか庭の方から歌が聞こえてくるんだゾ』
『誰か歌ってる...』
ユウ『この声ってもしかして..』
『行ってみよ?』
3人が庭へと出て辺りを見渡すと、寮から少し離れたところにその人物はいた
カリム『~~~~~♪』
寒空の下、いつも側にいるはずのジャミルの姿もないまま寮に背を向けて歌うカリムは、最初こそメロディーもしっかりしていた。だが途中で上手く歌えずにつっかえてしまい、歌を中断してしまった
カリム『んんっ、やっぱここでつまずいちまうな』
グリム『こらっ、カリム!夜更かしすると鬼コーチ・ヴィルにどやされるんだゾ!』