第48章 *剣呑マイティリー*
アデライトの声にも見向きもせずにレイラはもう一度手を横に振り払うと、闇のウサギは男達から離れては影の中へと吸い込まれるように消えていった
一瞬声が届いたのかと安堵したアデライトだったが、男達の悲鳴がその安堵を脆く崩した
?『うあぁぁぁぁぁぁ!!!』
?『やめろ!!やめてくれぇぇぇぇ!!!』
?『あ...あ..俺が..俺が..』
アデライト『どうしたんだい!?っ、これは..』
駆けつけて男達を見るが、そこに目立った外傷はなかった。だが、何もない場所へ手を必死に伸ばしたり、自身を掻き抱きながら蹲る様子に、明らかに何かが起きていることに気づいた
アデライト『落ち着くんだよ!何があったんだい!?』
一人を抱き起こして軽く揺さぶると、彼の視線は焦点が合わず激しくさ迷い、震えながらも口を開いて途切れ途切れに答えた
?『あ..あ..お、俺が..あのウサギに..く、喰われて..首が、首が!!』
アデライト『首...大丈夫だよ、お前さんはケガなんてしてない。首も何もなってないから、とにかく落ち着くんだよ』
?『は...ぁ...??ア、アデライト..様?』
アデライト『そうだよ。ゆっくり息を吐いて自分の首を触ってごらん』
アデライトに言われるままに震える手つきで自身の首を触ると、言葉通り怪我1つもなくちゃんとくっついていた
?『あ、あれ?何とも..で、ですがさっき確かに目の前で!』
アデライト『目の前で何があったんだい?』
?『俺が、もう一人いて..あの真っ黒なウサギが、もう一人の俺の首を..く、喰い千切ってて..』
アデライト『まさか..それがあの子の..』
『[やっと使えるようになったと思ったのに、なんか効果が短いなぁ...]』
つまらなさそうに呟かれた声に顔を上げると、そこには確かにレイラが立っていた。だが、瞳はいつもよりも妖しく輝き、レイラが普段しないような悪意と残虐に満ちた表情でアデライト達を見下ろしていた
アデライト『!?レイラ..じゃないね。ノアっていうのはお前さんかい』
『[そうだよ。キミが僕らの前の黒兎のご婦人だね?とんでもない魔法士のようだけど、この状態の僕を止められるかな?]』