第107章 *到着スカーレット(リドルの夢)*
"レイラ。お前さんにこの本をあげよう"
"わ、絵がすごく可愛い。ぇ..これ、黒兎?"
"そう、これは私たち黒兎を主人公にした、恐らく世界に2つとない本だよ"
"今はこれしかないの?"
"そうさね。とても昔にあったものだけど、黒兎の影響力を恐れた連中が売るのをやめさせて、残ったものも全て処分してしまったらしい。だからこれは最後の1冊だ"
"そんな大事なもの、私がもらってもいいの?"
"ああ。これは黒兎の存在を現す数少ない物。だから後継者であるお前さんに受け継いでもらいたい。私たちの存在が、いつかおとぎ話にすらならなくなっても.."
"ん、分かった。大事にする...ねぇ、これって読んでいいの?"
"......"
"おばあちゃん?"
"..それを読むかどうかは、お前さんの判断に任せるよ"
"どういうこと?"
"読めば分かるだろうけど、あまり気持ちのいい結末じゃないからね。もしかしたらとても怖く思うかもしれない"
"こわいのは..ゃ.."
"そうだろうね。でも私は、この本を自分への戒めとしてよく読んでいたよ"
"いましめってなあに?"
"してはいけないこと、過ちを犯さないように言い聞かせることさね。いつか自分が、それこそ世界が思うような化け物にならないために、己を律するために読んでいたんだ"
"化け物に、ならないために.."
"ああそれと、この本が世に出ると面倒ごとになるから、村の外へは持ち出しちゃいけないよ。エミリアたちにも見せるものだめだからね"
"ママたちにも?"
"私たち黒兎に関するものは、良くも悪くも影響力が大きすぎるから"
"....分かった"