第107章 *到着スカーレット(リドルの夢)*
やっとみんなに会える また一緒にいられる
そう思うと寒いのも足が痛いのも全然へっちゃらです
ウサギは泉をのぞきこんで強く強くお願いをしました
"みんなと一緒に幸せになりたい"
ドポン
願いをこめて飛びこむと、たくさん食べたウサギの体は重く、どんどん泉の底へと落ちていきます。すると泉がキラキラ光りだして、中からとても美しい女神様が現れました
沈んでいくウサギはまったく苦しくありません。願いがかなう喜びでいっぱいだったからです
そんなウサギに女神様はこう言いました
あなたは自分のわがままでたくさんの生き物を傷つけました。なので、あなた以外のすべての生き物を幸せにすることにします
あなたに食べられたかわいそうな生き物たちはみんな、あなたのことを忘れて幸せに生きていくでしょう
そして、あなたはこの泉の底で眠るのです
ずっと ずっと
もう二度とだれも傷つけないように
ウサギはびっくりして言いました
"ちがう ちがう 傷つけるつもりなんてなかった
みんなが大好きなの 愛してるの
一人ぼっちがいやだったの
嫌われて悲しかったの
わたしは 愛されたかっただけなの
お願いだからわたしもみんなと一緒に幸せになりたい"
ウサギは泣きながらお願いします
そんなウサギに女神様はため息をつくと、大きな大きなハサミを取り出して
ウサギのおなかを切ってしまいました
ウサギは痛くて泣きました
"いやだ いやだ くるしい くるしい
ごめんなさい ごめんなさい
もうこんなことしないからゆるして"
息ができなくなってバタバタもがきましたが、たくさん走ったので疲れてすぐに動けなくなりました
切られたおなかからは食べられた生き物たちが次々と出てきたので、女神様はみんなを元の姿に戻してそれぞれの国へと帰してあげました
そして動かなくなったウサギの上に大きな大きな岩を乗せました
食べられた王様たちが戻ってきて世界中が大喜び。帰ってきたことをお祝いして毎日毎日、どこの国でもお祭りさわぎです
誰も黒いウサギのことは覚えていません
それでもみんな幸せでした
それからもずっと ずーっと幸せに暮らしました