第107章 *到着スカーレット(リドルの夢)*
エーデュースが話題を壁一面に飾ってある家族写真に移したことで、チェーニャも含めて全員の視線と意識がそちらへと向けられた
幼い頃のリドルやトレイ、チェーニャの学校での行事や、海へでかけた時の思い出が所狭しと飾られ、自分たちの知らないリドルたちの姿にワイワイと盛り上がっていく
『(ちっちゃい時のリドルさんたち、可愛い)ねぇ、この写真って....ん?』
ふと気になる1枚を見つけ近づこうとしたその時、クンッと軽く引っ張られる感覚がして振り返ると、座り込んだままのトレイが片腕を掴んでいた。俯いているためその表情は見えないが、掴む手から伝わる震えが全てを表していた
『どうしたの?』
トレイ『..悪いレイラ。少しの間だけでいいから...側に、いてくれないか?』
『ん。分かった』
あまりにも小さすぎる声はレイラ以外の誰にも届かず、今にも消え入りそうなほど儚く脆い声色だった。そんな彼の横に静かに腰掛けると、レイラは掴まれた腕を一度離し、両手で優しく包み込んだ
『"少し"じゃなくて、トレイさんが安心できるまでずっと側にいるよ』
トレイ『..ごめんな』
『(手、震えてる。それにすごく冷たい)
大丈夫。大丈夫だよ、トレイさん』
震えが少しでも落ち着くように。冷えた手が温まるように。包む手で優しく撫でながら、いつも自分がされているように言葉をかけながら体温を分かち合う
トレイ『...お前はいつもこんな気持ちと戦ってるんだな。すごいよ、本当に』
『.....みんながいつも優しくしてくれて、私をひとりぼっちにしないでいてくれるからだよ。だからそのお礼に、私は私のできることをする』
トレイ『..強いな』
ケイト『ねぇねぇ、レイラちゃんのお家は写真とかいっぱい撮る感じなの?』
『ん?えと..ん、ママもパパもいっぱい撮ってくれるよ。あんまりお出かけしないから、そういう写真はちょっとしかないけど、"しきてん服"とかこの前の学校のお祭りとかはいっぱい撮ってた。
そうじゃなくても、何か嬉しいことがあった時とかも撮ってるよ』
ユウ『だろうね。VDCの時に1回しか会ったことないけど、あのママ・パパさんずーっとレイラのこと撮影してたもんね』