第107章 *到着スカーレット(リドルの夢)*
トレイ『はぁ、はぁ..し、心臓が口から出るかと思った!いつ母親がヒステリックに怒鳴り込んでくるかと..』
ケイト『よーしよし、ナイスファイト!トレイくん!』
オルト『トレイさんのバイタルに極度の緊張状態からの乱れが発生している。着席しての休息を推奨するよ』
デュース『クローバー先輩、こっちの椅子に座ってください!』
トレイ『あ、ああ。ありがとう』
広いほうがリラックスできるだろうと、複数人がけの椅子を勧められゆっくりと腰を下ろすと、まだ早る鼓動を抑えながら重いため息をついた
トレイ『もう子供じゃないってのに、情けないよ..昔怒られたことくらい。今となっちゃ笑い話になったと思ってたのにな。いざまたあの剣幕で怒鳴られるかもと思うと、やっぱり身構えるというか..』
『情けなくない』
トレイ『ぇ..』
『全然情けなくない。怖い声でずっと怒られ続けたら..そんなの怖くて当たり前だよ。
..だからお願い。無理して笑わないで。前にも言ったでしょ』
トレイ『..レイラ』
それはホリデー明けして暫く経った頃
ハーツラビュルを訪れていた際に発情を起こしてしまったあの事件(詳しくはトレイとのカームデイを参照)
甘く溶けるようなひと時を終え、鉛のように重くなった体が再び動かせるまで、彼の腕に抱かれベッドの上でのんびりしていた
最初は他愛もない話をしていたのだが、途中からリドルとトレイの関係やハーツラビュルの話題になり、その流れでトレイは幼い頃の話を独り言のように語りだした
トレイ『..っていう感じで、俺とチェーニャはその日からあの家を出禁になってな。ナイトレイブンカレッジにくるまでリドルとも殆ど疎遠になって、去年久しぶり再会したんだ』
『.....ひどい』
トレイ『まさかあそこまで怒鳴られるなんて思わなかったよ。ははっ、今じゃ家族での笑い話になってる。だからそんな悲しい顔しないでくれ』
『無理して笑わないで。トレイさん、全然笑えてないよ』
トレイ『...』
『そんなことあったら今でもずっと怖いはずなのに..笑えるわけないよ。だってずっと手が震えてるし、目だってすごく怖がってるもん』