第19章 *叛逆ビギニング*
レイラの調子も戻らないまま夜は訪れ、ユウ達はベッドで眠りについていた。実際寝ているのはグリムだけで、二人は眠らずに互いを抱き締めて静かな時を過ごしていた
『ユウ...』
ユウ『なに?』
『あのね...私、』
ユウ『"ごめん"とか"迷惑かける"とかだったら僕は聞きたくないな』
『え...どうして分かったの?』
ユウ『レイラの事だからきっと自分を責めて、混乱して悩んでる事に僕達が迷惑してるかも、なんて考えてるって思ってさ』
『ん...』
ユウ『少なくとも僕は迷惑してない。こういう事で悩むのも必要な事だと僕は思うから。リドル先輩や僕らもああ言ったけど、大事なのはレイラがどうしたいか、だから...』
髪を鋤くように撫で、諭すように優しい言葉で語りかけると、一瞬レイラの瞳が大きく揺れそして何かを決心したかのように一点をしっかりと見つめた
『ありがと...ユウのおかげで私は私でいられる。大会、気をつけて行ってきてね?』
ユウ『うん。必ず良い結果を持って帰るって約束するよ』
誓いを交わすように二人は甘い口づけをして、互いの温もりに身を任せて眠ることにした
その夜、ユウの夢にはあの日の百獣の王の姿はなかった。土の匂いが広がる洞窟の中、王位を奪った黒毛の王が退屈そうに寝そべっていた。
繁栄は途絶え、次第に干からびていく王国。仲間であるハイエナからも"前の王の方が良かった"と文句が飛び交い、王は腹を立て洞窟からハイエナ達を追い出した
ユウ『(比べられて怒るなら真面目にやれば良いのに...)』
モヤモヤとした感情が渦巻きながら、夢は遠退いていった。
早朝、ベッドの揺れと軋みを感じてユウは1度目を覚ました。覚醒しきっていない目で隣を見つめると、そこにいる筈のレイラの姿が無いことに気がついた
ゆっくりと辺りを見回すと、ベッドから離れた姿見の前で制服に着替え身だしなみを確認するレイラが立っており、ユウは小さな声で問いかけた
ユウ『レイラ...どこへ行くの?』
『!ユウ...おはよ。大会が始まる前に、どうしてもやりたい事できちゃった』
姿見から目を離さないまま答えると、"よし"と小さく言ってユウの座るベッドへと戻ってきた