第101章 *奮起シーフ(ラギーの夢)*
ラギー『はぁっ!!今の音..さ、さっきより少し..いや、少しどころじゃない。20倍はドキドキする。この美しい音色は一体?君の姿を..オレに見せてくれ!
君のことは、オレが絶対に見つけたい!!』
ユウ『傍から聞けば乙女ゲームさながらの甘いセリフなのに、相手がまさかの硬貨って...』
『ラギさんってほんとにお金大好きだよね』
ジャック『まさか..音だけで硬貨の種類を判別しているのか!?』
アズール『ええ。僕も彼のあの能力に気づいた時には、背筋に震えが走りましたよ。
あれは、ラギーさんがモストロ・ラウンジのバイトに入った時のことです..』
その日も大勢の客を相手に忙しくアルバイトを終え、ラギーは担当である掃除をしていると、その横でレジ締めをしていたオクタヴィネルの寮生が、不意に手を滑らせトレーを床に落としてしまい、乗っていた硬貨が床に散らばり四方へと転がってしまった
少しでも金額が合わなければアズールに何を言われるか分かったものではないと焦る寮生に、ラギーはポツリと1言こぼした
"今落ちた小銭、合わせて753マドルっすね"
その言葉に驚く寮生をよそに、ラギーは掃除の手を止めると、ソファーの下やカーペットの上、更には落ちた硬貨の音だけでその種類さえも分かったように、その重さや特徴を元に次々と見つけ出し、やがて集まった硬貨を数えたところ、レジの売上レポートと合致していたのだった
見ているはずもないのに、そのトレーに乗っていた硬貨の合計を音だけで判別できる能力に、寮生は驚きと賛辞を贈り、その様子を偶然離れたところから目撃したアズールは、声も出せずにその場で固まるしかなかった
ジャック『すげぇぜ、ラギー先輩..!一体どれだけ耳を鍛えりゃ、そんな風になれるんだ?』
セベク『た、確かに驚異的な聴力だ。だが、使い所が限定的すぎではないか!?』
イデア『RPGのスカウトジョブなら頼りになりすぎるスキルだけど、日常生活で必要かって言われると...』