第99章 *追跡マーメイド(アズールの夢)*
オクタヴィネル寮・モストロ・ラウンジ
ジェイド『ただいま戻りました』
フロイド『ただいまぁ〜』
アズール『ようやく戻ってきましたか。首尾はどう..なっ!?』
二人の帰還に振り向くと、ジェイドの手に契約書の入ったアタッシュケースが握られており、アズールは驚いた拍子に手に持っていたカップを落としそうになった
アズール『ジェイド、お前が持っている大きなアタッシュケースは..僕が集めた契約書が入ったものでは?』
ジェイド『ええ、そうです。金庫からベッドの下に移し替えたんですね』
アズール『どうして勝手に持ち出したり..はっ、まさか!誰かに隠し場所がバレたんですか?』
ジェイド『実はそうなんです。あなたの契約書を狙う不届き者がおりまして』
アズール『なんだって?くそっ!特注の金庫はまだ届かないのか?今度は手癖の悪いハイエナに狙われても安全な、最新の網膜認証のものにしたんです。あれさえ届けば、僕の契約書は誰にも傷つけることはできない!』
ジェイド『それはそれは..随分と大掛かりな金庫を用意しているんですねぇ。それが届く前に、手を打ててよかった』
アズール『は?何をわけの分からないことを言っているんです。さ、そのアタッシュケースをこちらに渡しなさい。また別の場所に隠しておかなくては』
そう言って手を伸ばすが、ジェイドもフロイドも無言のままアタッシュケースを渡そうとはしなかった。二人の行動にアズールの目に不信感が宿る
アズール『おい、聞こえなかったのか?それを早く僕に..』
ジェイド『アズール。あなたは本当に忘れてしまったんですか?現実ではとっくのとうに、こんなものは失ってしまったというのに』
アズール『現実?失った?何を言っているんです。僕は何も失ってなんかない。全てを手に入れたんだ!お前たちもそばで見ていただろう!?』
『『.....』』
アズール『なんだ、その目は?いいか、最早この学園には僕に逆らう奴は誰もいない。学園長ですらも僕の言いなりだ!
確かにまだ手に入れていない力はある..黒兎のレイラだ。だが、彼女を釣るエサは沢山ある。いずれはあいつの全ても僕のものになる。
この学園に属するものは、みんなこの僕にひれ伏している!そんな僕に逆らえば、どうなるか分かっているんだろうな』