第99章 *追跡マーメイド(アズールの夢)*
ジェイド『本当ですか?』
少し周囲の見回りに行っていたジェイドが戻り、目の前で腰を屈めて聞き直す。それでもレイラは小さく頷いて不調の原因を悟られないようにした
すると、ジェイドは徐ろにその場で膝を付き片手を伸ばすと、レイラの頬に添えてそっと持ち上げた
『ジェイ、さん..?』
どこか疑っているようなオッドアイは、そのまま近づき額を合わせて真っ直ぐに目を見つめる
『ぁ...』
彼の左目がわずかに光る。まさかユニーク魔法をかけられるのでないかと、反射的にギュッと目を瞑ると、頭上でクスッと笑い声が聞こえた
ジェイド『そう怯えなくてもユニーク魔法をかけたりしませんよ。そもそも、貴女には精神干渉系の魔法は効かないのでしょう?』
『ぁ..そう、だった』
ジェイド『ですから、目を開けて僕を見てください。貴女の美しい紅い瞳が見たいんです』
請われる声にゆっくり瞼を開けると、優しく細められたオッドアイが甘い色を乗せていく
『綺麗...』
ジェイド『貴女の瞳もとても美しいです』
イデア『(え、これは何を見せられてるわけ?もしかして拙者、お邪魔だったりする?うわ、あっち行こう..)』
目の前の甘ったるい雰囲気に居心地が悪くなり、気づかれないようにそっとその場から逃げていく
イデア『(つか、この大事な局面で呑気にイチャついてんなよリア充どもが!ああもう、心配して損した)』
心の中でキレ散らかしながら15mほど離れた場所から二人の様子を見ていると、愛おしげにジェイドを見つめるレイラに、不意に胸の奥がズキッと痛んだ
"お月さま.."
自身の名を呼ぶ甘い声
あの日褒めてくれた優しい言葉
他者へと向けられた愛らしい笑み
好きな人に対して惜しまない献身
全てが混ざり合いぐちゃぐちゃな感情となってイデアの心を侵食しようとしていた
イデア『(ほんと、マジでムカつきますわ..)』