第96章 *盛況アライブ(ジャミルの夢)*
グリムの言葉を背に受け小さく頷くと、カリムは突然のめまいに混乱するジャミルへ畳み掛ける
カリム『織物屋以外にも、何度も一緒に出かけただろ。屋敷を抜け出してラクダバザールに行って、ココナッツジュースを一緒に飲んだ』
ジャミル『一緒に出かけただって?お前が勝手に抜け出して、俺が慌てて追いかけたの間違いだろ!ぐああっ!
俺が従者を追う意味がわからない..そんなこと、俺はしていないはずだ!』
イデア『抑えきれないジャミル氏のツッコミ魂が刺激されている..!』
シルバー『いいぞ!もう一押しだ、カリム!』
カリム『ナイトレイブンカレッジに入る少し前..2人で厄介な事件に巻き込まれたことがあったよな。危ないところでジャミルが機転をきかせて、ユニーク魔法で悪い奴らを仲間割れさせてくれたんだ。それでオレたちは、無事に家に帰ってこられた。お前がいなかったらどうなってたことか!』
ジャミル『ううっ..!知らない。そんなのは..!』
カリム『お前はいつだって、最高に頼りになる親友だった。ジャミルに任せておけば全部上手くいくって信じて疑わなかった。
でも..そう思ってたのはオレだけで、お前はずっと嫌だったんだよな。だからスカラビア寮生やユウたちを操って、オレを実家に追い返そうとしたんだろ?』
穏やかに問いかけるその目には責めている感情よりも、彼にされたことへの悲しみが滲む。赤い瞳が小さく揺れ、カリムは言葉を続ける
カリム『ウィンターホリデーの時は、参ったよ。お前に裏切られて、大嫌いだったって言われて、すげぇショックだった』
ジャミル『ウインターホリデー..裏切り?あぐっ!あ、頭がっ!』
カリム『ジャミル。オレ..お前が考えてることは正直まだよくわかんねー。でも、これだけは分かるぜ。今のお前の姿は、本当にお前が望んだ姿じゃない。お前が望む最高の自分って、こんなんじゃないだろ!
思い出せ、本当の自分を!』
叫びと同時に自身の服をスカラビア寮服へと変える。その姿を目にした瞬間、ジャミルの脳裏にここではないどこかで同じ姿のカリムが自分に笑いかけている光景がフラッシュバックする