第96章 *盛況アライブ(ジャミルの夢)*
『ん?』
自分を見つめ動かないジャミルに首を傾げると、その瞳に僅かな熱の揺らぎが見える。だがすぐに逸らされてしまい、先程のはなんの意味を持っていたのかは分からなかった
ジャミル『..いや、なんでもない。じっと見てしまって悪かった』
『ううん、いいよ』
ジャミル『(こいつ、どこかで...)
...ああもう、イライラする。あのうすらバカめ!まったく、父さんも母さんも人が良すぎる。あの能天気すぎる一家を雇ってやるだなんて...』
ブツブツと小声でぼやくジャミルの様子に、グリムはこそりとオルトに耳打ちした
グリム『なあ、マレウスの見せる夢って幸せな夢なんじゃねーのか?ジャミルのやつ、イライラしててあんま幸せそうには見えねぇんだゾ』
イデア『これはユウ氏が言ってた、ヴィル氏の夢と似たパターンですな』
オルト『そうだね。ヴィルさん同様、カリムさんの存在は現実世界のジャミルさんの性格や能力の形成に大きく影響を及ぼしている』
シルバー『ジャミルの慎重な性格や巧みな魔法は、カリムを護衛する前提で磨かれていた、ということか』
セベク『なるほど。確かに、僕もマレウス様をお守りするという目標がなければ、今ほど魔法の鍛錬に身が入っていなかったかもしれない』
オルト『そういうこと。だから存在そのものを無かったことにすると大きな齟齬が出やすいんだろうね』
ヴィル『ふっ、どうだか。本当は内心ではカリムをこき使ってやりたいと思ってただけなんじゃないの?...ねぇ、レイラ。あんただってそう思うでしょ?』
『ぇ..なんでまた私?』
ユウ『先輩の時も、齟齬じゃなくてただネージュをこき使ってやりたかっただけじゃないかって、グリムに同意求められてたんですよ』
ヴィル『なるほどね』
『グリムもヴィルさんもなんで私に聞くの?...そんなにいじわるに見える?』
グリム『だってオメー、嫌いなやつとかに当たり強ぇーじゃねぇか』
ヴィル『あんたって結構過激だし、こういう"悪い"事を考えそうだから..違ったかしら?』