第94章 *夢幻ナビゲート(ヴィルの夢)*
セベク『しかし、敷地が広いな。グリムとヴィル先輩はどこへ行った?』
足の速いヴィルと、同じく足が速く尚且つ小さなグリムの姿はあっという間に見失ってしまい、周りを見回すも二人の姿はどこにもない
シルバー『どうしたら..そうだ。レイラ、力を貸してくれないか?お前の聴力なら二人のどちらかの声を拾えるかもしれない。どうか、頼む...』
『そんなに堅く言わなくても、やってって言われたらやるよ』
少し仰々しく頼むシルバーの物言いに苦笑いを浮かべ、そっと目を閉じて集中する。グリムの声、ヴィルの声、どちらか片方でも拾おうと耳をそば立てていると、2つ先のスタジオの方角から見知った声を拾う
『ん..聞こえた、ヴィルさんの声だ。あっちにいる』
シルバー『よし、行ってみよう』
『でもちょっと..やな感じがする。声が怒ってる感じがするの』
『『『???』』』
レイラの不安げな表情に戸惑いを見せるが、夢の主を追わないわけにはいかず、意を決してそのスタジオへと走っていった
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ヴィル『ちょっとあんた!なんでさっきは日傘を持って来なかったのよ』
声がしたというスタジオまであと少しのところで、突然中から聞こえてきた寒気のするほど冷えた声色に、エペルは覚えのある寒気が走る
エペル『..ん?この、うなじがヒヤッとする声は..』
オルト『やはりこの中から聞こえてくるようだね。行ってみよう』
急いでスタジオの前まで走っていくと、こちらより先に入り口からスタジオを覗く見知った姿にエペルが声を漏らす
エペル『あ、前に見えるグレーのふわふわって..』
セベク『おい、グリム!!!貴様、勝手な行動は慎めといつも言って...むがっ!』
グリム『シーーッ!!デケェ声出すんじゃねーんだゾ!』
声を荒げるセベクの肩に飛び乗り口を両手で塞ぐと、器用に尻尾で中を指し示した。全員口を閉じて中をそっと覗き込むと、さっきまでにこやかに話していたヴィルが険しい表情で誰かを睨んでいた