第92章 *出発プレパレーション(エペルの夢)*
グリム『..レイラ、オメーも何か言ってやれ!さっきから言いたそうにしてんのに、こういう時に黙ってたらダセーんだゾ!』
『!!...私、でも..エペルは』
グリム『あいつの事が心配なら、それこそちゃんと言ってやるのが仲間なんだゾ!』
『...』
晴天のような蒼く澄んだ瞳に真っ直ぐ見つめられ、レイラは俯きギュッと拳を握る。そして、覚悟を決めたように顔を上げると、グリムの横に並び立ち遥かに目線の上がったエペルを見上げる
『..エペル。今の貴方は本当の貴方じゃない。自分でも、分かってるでしょ?可愛さを上手に使ってやるって言ってた。それに、貴方が知ってるヴィルさんは今のエペルをそうやって褒めたりしないよ。
いつも自分に厳しいあの人が、ずっと上を目指してるあの人が、そんな簡単に他の人を褒めたりしない。ルクさんだって、ヴィルさんの言う事聞いてればいい、なんて絶対言わない。
私よりも、エペルが1番、1番分かってるでしょ!ねぇ、思い出して..強くて可愛い元のエペルに戻って』
エペル『元の..強くて、可愛い..ゔっ!!』
グリム『オマエはデュースと一緒に、自分の個性を武器にしてやるんだって張り切ってた!忘れちまったのか!?オレ様、あん時オメーのこと..ほんのちょっとだけだけど、カッケーヤツだと思ったのに!』
エペル『うぐっ!..ん、んだ、わ、わは..っ!今しかねった、強さ、あ、愛らしさっと..あ、ああっ!!
うわあああああああーーーーっ!!!』
頭の奥底から勢いよく湧き上がるように、VDCでの出来事、S.T.X.Y本部に乗り込みイデアたちを止めるために奮闘したあの日の思い出が次々と蘇る
響き渡る叫びと共にパリンっ!!とエペルの中で夢の殻が割れ落ちる
気づくとその体は逞しい大男から、線の細い元のエペルへと戻っていた