第91章 *内密コール*
揺籃の塔、黒鱗城を抜け竜の都を走り抜ける。逃げたはいいが、これからどうするのだと目で訴えかけると、少しスピードを落としながらリリアは口を開いた
リリア『わしがマレウスに隙をつくる。その隙にシルバーのユニーク魔法で、この夢から脱出せよ!』
シルバー『!?あなたを置いていけません!一緒に行きましょう!』
リリア『なぁに、マレウスの癇癪には付き合い慣れておる。夢の中ではわしの魔力も枯渇しておらぬし、力が有り余っとるあやつと遊んでやるにはちょうどいい』
セベク『しかし..!』
リリア『心配するな。マレウスはわしを再起不能にしたりはせんだろうよ。
..父親に似たのか、非情になりきれぬ優しい男じゃ。シルバー、セベク。"現実"のマレウスのこと..頼んだぞ』
『『..はい!』』
マレウス『見つけたぞ、リリア!さあ..どうしてやろうか?』
リリア『ふふ..相手してやろう、マレウス!』
炎と共に現れたマレウスに、リリアは武器を構え戦いを挑み始める。シルバーたちは加勢に入りたい気持ちをぐっと堪え、夢の渡りの準備をしながらリリアの生み出す隙を待っていた
そして、攻撃を跳ね返しマレウスが大きく後方へ飛び退いた瞬間、リリアは後ろを振り返りその合図を出す
リリア『今じゃ!さあ、行け!』
シルバー『..はい!』
『っ..リィさん!!』
リリア『レイラ!?』
一人この夢に残りマレウスと対峙するリリアの背へと、レイラの足は勝手に進み出し手を伸ばす
せっかく会えた
一緒に来てほしい
一人にならないで
そんな想いがレイラを動かす。声に振り向いたリリアは一瞬驚くも、その手を掴んでもう片方の手で小さな体を抱きしめる
『リィ、さ..』
リリア『ありがとう、わしを救いに来てくれて。これまでの道のりでお主がくれた優しさも強さも、全部覚えておるよ。本当に、得難い子じゃ』
『っ、一緒に..』
リリア『シルバーを、セベクを、マレウスを頼んだぞ。
現実で、また会いに行く』