第89章 *暗闇アストレイ*
『ん..一緒にいるよ。シルバーさんの側にいる。でもね、また逃げ出したくなっちゃってもいいよ。誰だってそういうことあると思うから。その時はまた追いかけて一緒にいるから』
シルバー『ーーっ!!優しいな、お前は。ありがとう、レイラ..』
言葉では伝えきれないほどの感謝を額へのキスに込める。そして浮遊魔法で浮き上がると、闇の入り口へと向かって進んでいった
ーーーーーーーーーーーーー
セベク『!!あれは..』
グリム『シルバーの手が伸びて来たんだゾ!』
ユウ『二人とも、引っ張るよ!!』
『『『せーの!!!』』』
入り口から現れたシルバーの手を一斉に引き上げる。指輪の光を纏ったその姿が段々と顔を出し、もう片方の腕に抱えられたレイラの姿も完全に闇から抜け出した
ユウ『レイラっ!!!』
『ひゃぅっ!!ユ、ユウ..苦しい』
ユウ『ごめんね..ごめんね..怖かったでしょ?すぐ見つけてあげられなくて、ごめんね..っ』
強く抱きしめられ顔が見えなくとも、震える体と声がどれだけ心配していたかを物語っていた。レイラはそんなユウの背中に手を回し肩口に顔を埋めた
『..ユウは悪くない。私が勝手に飛び込んで、勝手にあの闇に落ちちゃっただけだから。
..だから、泣かないで』
ユウ『泣いてないよぉ..ぐすっ』
グリム『メチャクチャ泣いてるんだゾ』
グリムの冷静なツッコミにムッとしながら、鼻をすすり体を離す。目を真っ赤にしたユウに苦笑いしながら立ち上がろうと足を踏み出そうとした
『!!!!』
ガクンと体が崩れ落ちて床に座り込む。同時に体の奥底から重苦しい何かが渦巻き、冷や汗が吹き出て呼吸が荒くなっていく
『っ..はぁ..はぁ..(なに、これ..)』
シルバー『どうした!?』
ユウ『レイラ!大丈夫!?どこか苦しいの!?』
セベク『あの闇の中に居続けたせいで体に支障をきたしているに違いない!すぐにここから出るぞ!』
『だ..じょ、ぶ..っはぁ..もう、とまって、きてるから..』
重苦しさは一瞬強く現れただけで、すぐに収まりを見せていた。暫く呼吸を整えていると、冷や汗も息苦しさも少しずつ消えていった