第89章 *暗闇アストレイ*
シルバー『..レイラ』
『ん?』
シルバー『戻ろう。セベクもユウもグリムも..みんなお前を心配して待っている。そして、みんなでここから出よう』
『..ん、帰りたい。みんなに会いたい..』
シルバー『ああ..帰ろう』
『ねぇ、聞いてもいい?』
シルバー『なんだ?』
顔を覗き込むシルバーの首に腕をそっと回し体を密着させると、胸に耳を当てその奥の鼓動の音に耳を澄ませる
『..シルバーさんは..私のこと、好き?』
突然の単純な質問。だが、この問いには軽々しく答えてはいけない気がしてシルバーは口を閉じた
シルバー『...』
『..んふふ、ごめん。早く帰ろ?』
返ってこない答えに苦笑いを浮かべながら先を促す。だがシルバーは一歩も動かず、胸に頬を寄せるレイラの頭に優しく唇で触れる
シルバー『(俺は..レイラを..)』
『シルバー、さん?』
シルバー『..お前と出会ってからの日々を少し思い出していた。いつだってお前は優しく、温かく、誰よりも他者を想う心を持っていて、そして...とても強かった。そんなお前に、俺もセベクも何度だって救われた。
だからという理由じゃない。守らなくてはいけない存在だからだという理由でもない。
俺が、俺自身が思うことを今、伝えてもいいか?』
『ん』
シルバー『お前が好きだ。大切で、守りたくて、共にいたくて....何よりも、愛おしい』
『!!』
見上げた深紅の目に映るオーロラは、温かく甘い色を含み更に美しく輝いていた。その言葉に嘘はない、彼自身の真実の思いであり、揺るぎない愛の芽生えだった
『(綺麗な瞳...)ありがと。私も、シルバーさんのことが大好き』
シルバー『ああ、ありがとう。これからもお前にそう思ってもらえるように、俺はもう迷わない。もう、闇に逃げたりしない。だから..共にいてほしい』