第89章 *暗闇アストレイ*
シルバー『!!!』
『キラ、キラ..オー..ロラ。きれい..』
シルバー『ぁ、ぁ..レイラ..』
『濡れて、る..泣いた、の..?』
シルバー『!!』
細く小さな指先がゆるりと持ち上がり、シルバーの頬を撫でる。冷えた感覚が頬を滑り、溢れていく涙が指に沿って落ちていく
完全に戻った訳では無いが、自分に気づき視線を向けてくれただけで、熱く激しい思いが湧き上がり、気づけば衝動のままに目の前の唇を奪っていた
『ん..』
シルバー『っ...』
レイラは突然のキスにも驚かず、その柔らかい感触を甘受するように目を閉じる
突然、二人の合わさった唇越しに温かい"何か"がレイラの中に流れ込み、体を優しく巡っていく
二人ともそのことに気づいてはいなかったが、冷えた体に温かみが戻り、意識がハッキリしていくことに、レイラだけは気づいていた
『....あったかい..』
シルバー『ぁ..』
『おはよ..シルバー、さん』
シルバー『ーーーーっ!!!
ああ..ああ..おはよう、レイラっ..』
ふわりと微笑んだその体を強く抱きしめる。今までに抱えていた想いが溢れ、更に涙がオーロラの瞳から流れ落ちる
『ぅ..シルバーさ..苦しい』
シルバー『すまない..だが、もう少しだけ..頼む』
『...ん、いいよ』
くすっと小さい笑い声が聞こえ、少し体を離して真っ直ぐに視線を合わせる。光を取り戻した深紅の瞳が、リリアに似たその瞳が穏やかに自分を見つめていた
その色にホッとして心がようやく落ち着きを取り戻す。もう一度強く抱きしめ、腕の中の温もりを忘れないように自身に刻みつける