第89章 *暗闇アストレイ*

グリム『ひぃ、はぁ..セベクたちにやっと追いついたんだゾ！セベクのやつ、いきなりピカピカーっ！てなったと思ったら、ズババーッ！と一人で先に行っちまいやがって！』


ユウ『..と思ったら、何で喧嘩してんのあの二人ぃ！？ちょ、ストップストップ！！』


追いついたと思った矢先、セベクたちが武器を交え戦っている光景に出くわし、慌てて止めようと声をかけるが、二人には届かず戦いを続ける


セベク『これで終わりだ！くらえっ！』


シルバーの体制が崩れかけたその一瞬、セベクは一気に詰め寄り警棒を振り上げ魔力を放つ


シルバー『！！はぁああっ！』


完全に隙をつかれ、他の者なら諦めて攻撃を受けていたかもしれない。だがシルバーは自分でも驚くほど自然と体が動き、セベクよりも早く武器を向け魔力を放った


それは生き物としても防衛本能なのか、それともかの師に教え込まれた"生きる術"だったのか




『『はぁ、はぁ、はぁ..！』』


セベク『勝負あったな..シルバー..




僕の..負け、だ..』





ガクッと片膝を付き、力の抜けた手からは武器である警棒が音もなく転がり落ちる


シルバー『あ、ああ..俺はなんてことを！』


幼い頃から共に修行してきた、もはや家族と言っても過言でない大事な弟弟子を手に掛け、ゾッとした寒気と自分のしたことの恐ろしさに手が震える


シルバー『最後の一撃、わざと受けたのか！？セベク！』


セベク『わざと、だと..？貴様...っ、



この阿呆がっ！！！』


シルバーの言葉に怒りに震える体で立ち上がる。顔を俯かせながら大股で近寄り拳を振り上げ、ポカっと少しの衝撃が伝わる程度の力でシルバーの胸を叩いた


まるで、小さな子供が親に癇癪をぶつけるように


セベク『僕は負けるつもりなど毛頭なかった！今度こそ、今度こそ貴様に完勝してやるつもりで..本気で戦ったんだ！

でも勝てなかった！畜生っ！こんな悔しいことがあるか！？』


ポカポカ叩き続け子供のように悔しがる様にたじたじになりながら、シルバーはその手を止めさせることはしなかった