第89章 *暗闇アストレイ*
〔No side〕
ユニーク魔法、迅雷一閃で雷を纏ったセベクはその雷の衝撃でシルバーの意識を戻させ、腕を掴み闇の中から引き上げた
だがシルバーの心の淀みは消えたわけではなかった
シルバー『でも..きっと親父殿は、マレウス様は..俺のことを憎んでいる』
セベク『なんだと?』
シルバー『..夢の中で、真実を知った。俺は..俺は、ヘンリクの妹であるレイアと夜明けの騎士の間に生まれた子供..親父殿とマレウス様の、仇の子だったんだ!』
セベク『...!!』
シルバー『もうお二人に会わせる顔がない..仇と瓜二つに育った俺を、親父殿は一体どんな気持ちで..!』
セベク『...』
シルバー『仇の子など、愛せるはずがない!憎んでいないはずがない!そうだろう!?』
セベク『馬鹿者ーーーっ!!!』
バキッ!!!
シルバー『ぐはっ!!』
頬に衝撃が走り体が後方へと吹き飛ぶ。殴られたのだと気づくのが一瞬遅れ、驚きと混乱でオーロラの瞳が揺れる
セベク『貴様のことは常々馬鹿だと思っていたが、まさかここまでとはな』
シルバー『えっ..?』
セベク『たとえ言葉を尽くしても、今の貴様には理解できないだろう。武器を取れ、シルバー』
シルバー『やめてくれ..セベク。俺はもう、誰も傷つけたくない..っ!』
セベク『なんと情けない姿だ。こんな男が僕の兄弟子とは..失望したぞ』
幼い頃から共にいる自分でさえも初めて見たシルバーの弱々しい姿に、セベクは怒りと失望が湧き上がり、拳を強く握ると腰に差した警棒を抜いた
セベク『今の貴様の様子をリリア様が知れば、悲しまれるに違いない』
シルバー『...』
セベク『せめてもの情けだ。これ以上の醜態を晒す前に、この僕が成敗してくれよう!!』
シルバー『..分かった。それで..お前の気が済むのなら..』
セベク『いざ、勝負!!はあああっ!!』