第89章 *暗闇アストレイ*
リリア『何を今更!時間は戻らない..もう遅い!はあああ!』
シルバー『ぐはっ!!』
赤と黒の斬撃がぶつかり合う銀の剣ごとシルバーの体を吹き飛ばした。闇の地べたを転がりながらなんとか受け身を取るが、元々戦意のないシルバーにとっては、すぐに立ち上がることが出来なかった
リリア『さあ、お前もマレノアたちのもとへ送ってやる。覚悟しろ!
ははは..あははははは!!』
『シルバーさん!!』
シルバー『っ..』
狂ったように笑うリリアが魔石器を振りかざす。だが、振り下ろされる直前で突然リリアの体が真っ黒に染まり、足元に広がる闇と同化して溶けて消えていった
シルバー『親父殿の姿が、黒く溶けていく。そうか、あれは俺の心が作り出した闇。
..悪夢、か..』
『シルバーさん!良かった..無事で』
走り寄り纏った鎧ごと強く抱きしめる。長い金髪に顔を埋めて無事を甘受している横で、シルバーの瞳は光を無くし絶望に震える唇で呟く
シルバー『..もう..疲れた..闇よ、俺を沈めてくれ。もっと深い、覚めない眠りに..』
『っ..!!』
すると二人の足元から闇が吹き出し、そこに穴が空いたように体がズブズブと沈み始めた
『だめっ、シルバーさん!闇に負けないで!!』
シルバー『...』
『(このままじゃ、戻れなくなっちゃう。お願い..これ以上シルバーさんを、苦しめないで)』
飲み込まれていく最中、決して離れないようにその体を抱きしめ、シルバーを少しでも守りたいという願いを胸に、覆いかぶさる闇の深淵へと引きずり込まれていった
『(お願い..シルバーさんにはもう苦しい思いをしてほしくない。私が代わりになるから..どうなってもいいから..この人を苦しめるなら、私を代わりに傷つけていいから)』
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深く深く沈み込み、もうどれくらい沈んだか分からなくなった頃、二人の体は底へと辿り着いた
『シルバーさん..』
シルバー『...レイラ..もう俺を救おうとしないでくれ。一人にさせてくれ..このまま』
『だめ..一人はだめなの。シルバーさんがどんなに嫌がっても、私は最後までシルバーさんの隣にいる』