第89章 *暗闇アストレイ*
シルバー『もう..歩けない..歩きたくない..』
どのくらい歩いたか分からないほど長い時間、暗闇を進み続けたシルバーは、もう心が限界に近づいてきていた
歩くことすら苦痛に感じてその場で膝をつくと、黒く続く天を呆然と見上げる
シルバー『ごめんなさい、親父殿..マレウス様。俺の夢は、いつかあなたたちを守れる騎士になることでした。
でも、この夢はもう..ううっ..』
『...(こんなに泣いてるシルバーさん..初めて見た。やっぱり、どうしても自分が許せないんだ..どうしよう、どうしたら、この人を助けられるの?)
シルバーさん..』
名前を呼ぶが返事はなく、嗚咽だけが響く。何度声をかけても励ましても触れてもシルバーの心が晴れることはない
だがここで諦めれば二度と戻ってこれない。そんな確信めいた予感がレイラの体を動かす
無駄かもしれないと分かっているが、今度こそ彼を抱きしめその涙を拭うことができたなら、少しでもその心をほぐしてあげられるかもしれない
ゆっくり近づき手を伸ばす。その手が震える肩に置かれようとしたその時、
?『こんなところにいたのか』
シルバー『!!この声は..』
『なんで、ここにいるの?
リィ、さん..』
目の前に立つ、ここにはいるはずのない右大将のリリアの姿に、二人は目を見開いた。もしかしたら、卵を届け終わって助けに来てくれたのかもしれない
会いたかった人物の登場にホッと体の力が抜ける
だが、そんな淡い希望を打ち砕くように、リリアは仮面越しに憎悪に満ちた声色で、二人へと魔石器を突き出した
リリア『やっと見つけたぞ
ーー夜明けの騎士』