第89章 *暗闇アストレイ*
子供『とと?どうしたの?どこか痛いの?』
リリア『..何でもない。こちらにおいで』
俯いたリリアを心配し顔を覗き込むシルバーを、そっと抱き寄せその腕に閉じ込める。言いようもない想いが溢れ、抱きしめる力が自然と強まっていく
子供『とと、そんなにぎゅっとされたら苦しいよ。ふふふっ』
リリア『最高の贈り物じゃ。このお守りがあれば、あと1000年は生きられそうな気がしてくる。ありがとう』
子供『えへへ..大好き、とと』
リリア『わしもじゃよ、シルバー』
互いに幸せに満ちる笑顔がまるで一枚の絵画のように美しく、レイラは目の前の二人の姿に、エミリアとディオンに強く抱きしめられた日を思い出し、静かに一筋の涙を流した
シルバー『あのドングリのブレスレットは、寮で部屋を片付けている時に見つけた..!あれは俺が送ったものだったのか。すっかり忘れていた..』
"これは、わしが過去に賜ったもので一番価値のあるものだ。捨てるなんてとんでもない。マレウスですら羨んだお宝じゃぞ! "
シルバー『ボロボロになったどんぐりなんて、価値があるわけがない。なのに、どうしてあなたはあんな嘘を..ううっ..うう..!』
『...(手、握りたい。でも今のシルバーさんは凄く嫌がる。何もできない..)』
グブブブブ...
シルバー『..またか』
『(闇...せめて、せめてシルバーさんが闇に負けないように、少しでも戦う気を持てるように.. 何かできたらいい、な)』
その願いが体を蝕むトリガーとなっていることに、このときは気づかなかった