第89章 *暗闇アストレイ*
シルバーさんの姿が遠くなってく
手のひらはちょっと赤くなってて、払われたときのあのドロッとしたオーロラの目を思い出して怖くなった
今の私じゃ、あの人に何もできない。何もしてあげられない。助けてあげられない。楽にしてあげられない
やっぱり私は弱い
何もできない
いつも助けてもらってるくせに、誰のことも助けられない
役立たず
でもダメ
あの人を一人にはできない
また払われるかもしれない。もっと怖い声で怒られるかもしれない
でも行かないと
今行かなかったら絶対後悔する。あの人を一人にしたことを絶対後悔する
行かないと
『待って』
怒られてもいい。また拒絶されてもいい
泣くのも怖がるのも後でいい
あの人と一緒にいることが、役立たずの私に今できることだから
私の声を無視して歩き続けるシルバーさんになんとか追いついて、少し後ろを着いて一緒に歩く
シルバーさんはもう何も言わなかった
隣を歩くと嫌がるかもしれないから、できるだけ後ろに..離れすぎないくらいで
せめて、この人が少しでも寂しくないように
ねぇ、シルバーさん
一人ぼっちは、だめだよ