第89章 *暗闇アストレイ*
『..ん。でもリィさんはシルバーさんを育てた。もう恨んでないんだよ。あの人の子供だってリィさんは分かってて、それでもシルバーさんを愛してる。それなら、もう気にしなくていいんだよ。自分を許していいんだよ..
だから泣かなくていい。そんな顔もしなくていいの..』
ゆっくりと歩み寄り、涙の筋が残るその頬へと手を伸ばす。流れ落ち続ける涙を拭い、大丈夫だと心から伝え、その悲しみに暮れる顔が少しでも晴れてほしい
ただそれだけを願いながら、伸ばした指先でその頬に触れる
パンッ!!!
乾いた音が永遠に続く闇の世界で一際大きく響いた
〔レイラ〕
『ぇ...?』
最初、何が起こったか分かんなかった
シルバーさんの涙を止めたくて、苦しまなくていいんだよって伝えたくて手を伸ばした
でも返ってきたのは手のひらの痛みだけ
じわじわ
じわじわ痛みが強くなる
その痛みにぼおっとして、ちょっとしてからようやく何が起こったか気づけた
手を、払われた
拒絶された
痛い、苦しい、悲しい、ごめんなさい、どうして?
色んな気持ちが一緒に登ってきた。でも今はきっとそれを強く思ってるのは私じゃなくて、シルバーさんなんだ
今一番辛い思いをしてるのは
この人なんだ
『シ、ルバ..さ..?』
シルバー『はっ...!』
シルバーさんも手を払ったことに気づいたみたいですごくビックリしてる。でもすぐにまたあの暗い顔に戻って私に背中を向けた
シルバー『っ..お前が思っているほど、簡単な話じゃないんだ..あの思い出たちを見るたびに、どんどん自分が許せなくなる。もうあの人の元にはいられない。いてはいけないんだっ!!
もう着いて来ないでくれ。一人してくれ。今の俺には、お前の輝きが...苦しい』