第89章 *暗闇アストレイ*
シルバー『....』
『素敵だね』
シルバー『親父殿、マレウス様..俺は..ううっ』
優しく温かい光景だというのに、シルバーの心は黒く落ちていくばかり。その光景が輝かしく温かいほど、それが逆に心を追い詰めていく
震える背中に添えられた小さな手が優しく静かに撫でる。このままでは消えてしまいそうな背中を抱きしめようと近づくと、足元が急に暗く淀んだ気で満ちていく
『!!また、闇..』
シルバー『性懲りもなく現れたか..消えろ』
普段の穏やかな声色からは想像できないほど冷え切った声が、躊躇いもなく闇を切り裂いていく
闇が完全に払われると、景色が戻り静寂が二人を包んだ
『...消え、た。あの、シルバーさん、ありが、』
シルバー『....』
レイラの言葉を聞かずシルバーはまた一人で歩き出す。目の前で真実を知ってしまった故に、悲しみや苦しみが心に淀みとして溜まっていく
こんな自分がリリアやマレウス、そしてレイラたちと共にいて良い訳がない。そんな気持ちが彼を闇の奥へと足を運ばせていく
『待ってシルバーさん!お願い、待って..』
シルバー『もう、ついて来ないでくれ』
『や..一人にできない。一緒に、一緒に帰ろ?ユウもセベクもグリムも心配してる。こんなとこにいちゃダメ..みんなのとこに帰ろ。
リィさんだって、すごく心配してるよ』
シルバー『っ..そんなわけが..』
『あるよ..だって、大事な家族でしょ。いっぱいの愛で育てた、大切な子供だよ』
シルバー『やめてくれっ!!』
『っ..!!』
拒絶と怒りが混じったような怒号に肩が震える。ジワリと涙が込み上げ嗚咽が出そうになるが、目の前で泣いているシルバーの姿が、今にも壊れてしまうくらい弱々しく見え、自分より悲しんでいる彼の前で泣くわけにはいかない、と嗚咽を飲み込んだ
シルバー『俺はもうあの人の家族である資格なんてない!俺は、俺は..親父殿が愛する人達の仇の子なんだ。本当ならあの日に殺されててもおかしくなかったのに..』