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【ツイステ】黒兎は駆け巡る

第89章 *暗闇アストレイ*





マレウス『ま、待てリリア!こんな小さな生き物、僕が触ったら壊してしまうぞ』


リリア『大丈夫じゃ。優しく撫でながら子守唄を歌ってやれば、泣いていてもころっと眠る。すぐに戻るゆえ、頼んだぞ!』


早口のまま言い残すと、マレウスにシルバーを丸投げして、光の粒と共に瞬間移動で出かけて行ってしまった


マレウス『おいっ、リリア!』


赤ん坊『う..ううーー、ふぁっ..』


マレウス『まずい。目を覚ましたか?』


赤ん坊『ふっ.ふううっ..ほぁあああん!ぎゃあぁあああん!』


マレウスの声のせいか、親であるリリアがいなくなったせいなのか、シルバーはそのオーロラの瞳いっぱいに涙を溜めて大声で泣き出してしまった


間近で初めて聞く人間の子供の鳴き声のあまりの声量に、思わず片手で耳を塞ぎ辟易とした表情で睨みつける


マレウス『うっ..なんてうるさい鳴き声だ。子守唄を歌えば眠る、だと?僕が子守唄など知っているわけが..



..いや、待てよ..一曲だけなら、僕も知っている』




ふとマレウスの頭に一つの歌が過ぎる。実際に歌っているところを見たわけではない。なのに記憶の奥に確かに存在するその歌を、鼻歌にして赤ん坊に聞かせ始める



マレウス『〜♪』





『ぁ..この歌..』


それはかつて、卵だったマレウスを抱きしめながらマレノアが歌い、先程までシルバーを抱きしめながらリリアが歌った子守唄だった


暫く歌っていると、落ち着いてきたのか赤ん坊はまた瞼をゆっくり落とし、静かな寝息を立てて眠りについた


ホッとしたマレウスは近くの椅子に腰掛け小さく安堵のため息をついた


マレウス『..本当に、寝た。はぁ..リリア、早く帰ってきてくれ。それにしても、僕はどこでこの子守歌を聞いたのだろう。もう覚えていないが..乳母の誰かが歌っていたのだろうか?』


シルバー『マレウス様..』


『(そうだよね。覚えてないよね。お姫様が、まだ卵のツノ太郎に歌ってたんだもん)』


微笑ましいような、どこか切ない過去の光景に目を伏せていると、光が消えて再び闇の世界へと戻っていく



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