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【ツイステ】黒兎は駆け巡る

第89章 *暗闇アストレイ*





リリア『..はぁ。そんなことをすれば、マレウスに顔向けできんな。あやつに人間を愛せと..隣人と共に歩めと説くのなら、わしもそうせねばならんじゃろ。
それに..あの日、夜明けの騎士が見逃してくれなかったら、わしはマレウスすらを失っていた。


人間を、愛せるだろうか...この"俺"に』



殺意に満ちていた瞳が戸惑いと不安に変わり、まっすぐに赤ん坊を見下ろす。そんな彼にシルバーは胸を裂かれるような思いに駆られ、また大粒の涙をオーロラの瞳から零していく


シルバー『やめてください、親父殿..俺は、俺はあなたに愛されていい存在じゃない』


『シルバーさん..そんなこと、』


赤ん坊『あぁぁん!ぎゃぁーーーん!』


シルバー『やめろ!泣くな!お前に泣く資格なんかないんだ!』


『シルバーさん!!』


こみ上げる怒りや悲しみを、泣きじゃくるかつての自分へとぶつけるように叫ぶ


届くはずがない、何も知らない赤ん坊にぶつけても仕方ない。頭では分かっていても、リリアが愛した大切な2人の仇の子である自分が、現在まで大切に愛されていたことがどうしても許せなかった


『そんなこと言わないで。シルバーさんは悪くない。あの人の子供でも、シルバーさんが愛されなくていい理由にはならないよ!』


シルバー『違う!俺は...親父殿に..』





リリア『よしよし..そんなに泣くな。こんな小さな体で、よくぞ長き孤独に耐えた。よいせっ..と。くふふ、案外どっしりしておるな。マレウスが孵った日のことを思い出す。まるで昨日のことのようじゃ』


赤ん坊を抱き上げ背中をトントンと叩いてあやしながら、腕にかかる命の重みに優しく微笑んだ


リリア『..自分の命と引き換えにしても我が子だけは、と願うのは妖精も人間も同じ、か』


赤ん坊『ひっく..ひっく..あぶ..』


リリア『夜明けの子よ。今日が新たなお主の誕生日じゃ。よって..お主に祝福を授けよう。


ーー夜の祝福あれ』



願いをかけるようにコツンと額を合わせる。すると、窓から差し込む月光が一層輝きを増し、二人の体を明るく照らす



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