第88章 *緊急リターニング*
マレノア『...』
リリア『姫、ご決断を!』
もはや一刻の猶予もない状況に、リリアは意を決して退却を進言する。真剣そのものな目を向けられ、マレノアは暫し考えるように目を閉じていたが、次第に喉の奥から笑いが込み上げ、この状況に似つかわしくない笑い声を上げた
マレノア『ふふふ..はははは!!退けと申したか?このわたくしが負けると?お前でなければ炎を一吹きして灰にしていたところだぞ、リリア!』
笑みから怒りへと感情が変わると、ブワッとリリアの足元に黄緑色の炎を走らせる
リリア『姫!』
マレノア『奴らの狙いは、私の杖に使われている魔法石"プリンセス・グロウ"..そしてこの卵だろう。人間風情が、私に決闘を申し込むとは..随分と思い上がったものだ。弱く、脆く、愚か。人間どもは、よほど滅ぼされたいとみえる。
ならば、望み通り食らわせてやろう..裁きの雷槌をな!』
リリア『お待ちください!あの姑息な男が何の策もなしに一対一で決闘などと言い出すわけがない。これは罠だ!』
マレノア『くだらん。下賤の策略など、蹴散らしてくれよう』
リリア『あ〜〜〜っ!!もう!この我儘姫!こんな時くらい、真面目に俺の言うことを聞け!』
頑なに退却を拒否する様子についに我慢できなくなり、リリアの口調から敬語が消え去り、レイラたちに接すると同じようなものになっていた
リリア『ガキの頃城を抜け出して大騒ぎになった時も、女王陛下の杖にいたずらしてぶっ壊した時も..はるばる遠方から呼んだドラゴンとの見合いを台無しにした時もそう!俺が"やめとけ"って言ったことで、間違ってたことあったか!?』
ユウ『(ドラゴンとの見合いって..)』
リリア『毎回毎回、女王陛下と元老院のジジイどもに大目玉くらってきただろうが。今回ばかりは、選択を間違えれば取り返しがつかない。絶対に言うことを聞いてもらうぞ』
マレノア『お前が私にそんな口をきくのは久しぶりじゃないか。だが、やめておけと言いながらも、お前が私に手を貸さなかったことは一度もない。ふふふ』
確信と信頼、そしてほんの僅かの嘲さを含ませ甘い声で笑う