第88章 *緊急リターニング*
リリア『人間ですが、彼らは敵ではありません。今回の遠征中に出会ったのですが、我が隊によく尽くしてくれました』
セベク『お初にお目にかかります。セベク・ジグボルトと申します!』
シルバー『シルバーと申します、殿下』
ユウ『ユウです。隣のこの子はグリム。それと..』
マレノア『許しもなくその口を開くな、人間ども。わたくしの目を見るなど、不敬の極み。跪くがいい』
礼儀として名乗り始めるも、最後まで聞き届けることなく怒りに触れたマレノアの魔力が膨れ上がる
その瞬間、ユウたちの体がまるで上から押さえつけられるように床に沈みこんだ
『『『うっ..!?』』』
シルバー『あ、足が勝手に床に..っ!』
セベク『ぐぅっ!い、息が..!』
伸し掛かる重圧が息苦しさを与え、抵抗もできないまま視界が一瞬白くボヤけ始める
リリア『マレノア様!お戯れはそこまでに』
リリアの制止ですぐに重圧は解けたものの、あれが彼女のただの"戯れ"だということに、目の前の妖精王への恐れが高まる
バウル『.. 姫様の人間嫌いは相当なものだ。ここは大人しくしているがいい』
リリア『はぁ..ただでさえ人間どもに攻め入られてんのに、あの黒兎まで敵に回してどうするつもり....あ..』
マレノア『なに?"黒兎"だと?』
しまったと気づいたが既に遅く、ユウの背中から見え隠れする若干垂れ気味の耳を見つけると、マレノアは驚きに目を丸くしたあと、ライムグリーンの瞳を妖しく細めた
リリア『(くそっ、やらかした!)姫、今のは、』
マレノア『そこに隠れているな。姿を見せろ。躊躇うなら無理矢理引きずり出すぞ?』
『ぁぅ...』
ユウ『っ、レイラ..』
再び向けられる鋭い視線にユウの肩が震える。背に隠した兎も怯えているのが分かっているため、守ってやりたいと心では思うも、もたもたしていると先程の雷か引力魔法で引き寄せられる可能性を考え、苦渋の決断でそっと横に避ける
『..ユウ』
ユウ『ごめん..』
『大丈夫。守ってくれてありがと』
俯くユウの手を一度軽く握り、すぐに離すと真っ直ぐマレノアの元へと歩き出す
リリア『..悪い』
『大丈夫』