第88章 *緊急リターニング*
野ばら城・広間
ギギィ..と音を立てて開かれた先には、城主が君臨する大広間が広がり、無機質な石造りの奥には輝く玉座に腰掛ける一人の女性がいた
リリア『ご無事ですか、マレノア様!』
走り寄るリリアの呼びかけに玉座の妖精、マレノア姫はゆっくりと顔をあげる。妖精の王に相応しい夜の祝福を受けたような黒のドレスを纏い、美しさの中に妖精王の威厳を表したような、銀の肩当てと腹部と角の装飾が陽の光を反射し妖しく光る
『(ぁ..すごい..)綺麗な人..』
ユウ『ツノ太郎そっくりだね』
マレノアの美しさに惚けていると、リリアの姿に気づいたマレノアはその美しい顔を突然歪め、怒りに満ちたライムグリーンを細めて怒声を響かせた
マレノア『遅いぞ、リリアッ!!』
ズガンッ!!!ズガンッ!!!
リリア『うおっ!あぶねぇ!』
グリム『ふぎゃーっ!な、なんだぁ!?』
『ひゃっ!!』
ユウ『どぅえ!?』
マレノアの怒りを表すように、リリアの頭上を狙い紫の雷が降り注ぐ。何とか避けるも怪我のせいか僅かに動作が遅れ服の端が撃ち抜かれる
マレノア『わたくしと卵が危機に瀕しているというのに、どこで油を売っていた!
馬鹿者っ!愚か者っ!この役立たずっ!!』
ズガンッ!!ズガンッ!!ズガンッ!!
治まらない怒りが鳴り止まない激しい雷となり、近衛兵、バウル、レイラたちの頭上にも落ち始め、あまりの激しさに全員必死に逃げ惑うしかできなかった
『わ、わわわっ!!』
ユウ『ちょっと怖すぎでしょぉぉぉ!!』
リリア『申し訳ありません、マレノア様!右大将リリア、敵に不覚をとり馳せ参じるのが遅れました!』
マレノア『言い訳など聞きたくない。王宮近衛兵の面汚ししめ!』
バウル『お、お許しくださいマレノア様!
ぐわーーっ!!』
グリム『ひぃ〜っ!優しい歌声と正反対のコエーお姫様なんだぞ〜!!』
リリア『言ったろ。心配なのは俺の命と城の方だって!』
『はぁ、はぁ、怖かった..お姫様、すごく怒ってる』
ユウ『リリア先輩の言った通りの苛烈な人だった..』