第88章 *緊急リターニング*
バウル『魔法で声を拡声しているのか?なんと騒々しい!』
グリム『これ、夜明けの騎士の声か?』
リリア『いや、違う。喋ってるのはその隣にいる男だ。樽みてぇにデカい体。脂ぎった下品な声..あいつは..』
そこには麗しき輝きを放つ夜明けの騎士とは正反対と言っても過言ではない大きな巨体の男だった。それは道中話にも出ていた、銀の梟のをまとめる首領、ヘンリクだった
リリアの言う通りの下品な声で、城にいるであろうマレノア姫へと降伏し、"プリンセス・グロウ"と呼ばれる魔法石と城を渡すようにと捲し立てる。
自分たちからこの国の領土を荒らし始めたにも関わらず、ずっと誠実に交渉してきたと言い、国を守るために抵抗してきた妖精たちの行いを自分たちの誠実さを踏みにじったと虚言を吐き始める
その言葉にリリアたち妖精は勿論、鉄の者たちの行いを道中見てきたレイラたちも余りの傲慢さにグッと嫌悪に顔をしかめた
『(うるさくて嘘ばっかり..あの人、嫌い)』
ヘンリク『だが、我々も鬼ではない。貴様らと違ってな!故に..貴様らにチャンスを与えてやろう。姫よ、我らが警備隊隊長、夜明けの騎士と1対1の決闘を行うのだ!
貴様が名誉をかけて決闘に臨み、勝利を掴んだならば..我々は城の包囲を解くと誓おう。
30分だけ考える時間をやる。よ〜く考えることだな!』
響き渡る下品な高笑いを最後にヘンリクの声は聞こえなくなった。30分というあまり猶予のない状況に一同に焦りの色が見えだす
バウル『夜明けの騎士と決闘だと..!?バカな!そんなもの、罠に決まっている!』
リリア『うだうだしてる時間はねぇ、野ばら城へ空間転移するぞ!』
バウル『はっ!』
セベク『レイラ、もう離れろ』
『ぁ..ごめん』
セベク『べ、別に謝れと言っているわけではない!』
ユウ『今から転移魔法で移動するから、こっちにおいで。手、繋いでおこう?』
『ん』
ユウの手をしっかり掴み、往還士の作成した陣に全員で足を踏み入れる。王城の中は、マレノア姫は..次々と溢れる不安を胸に、レイラたちは光に包まれその場から姿を消した