第87章 *懐刀インパクト*
グリム『へぇ〜。金の髪で美しい顔かぁ。ヴィルみてーな感じかもしれねーな』
セベク『ふん!美しさなど。騎士に必要なのは強さのみ!そして強さに関して、この国で右大将リリア様の右に出る者がいるはずがない』
リリア『当然だ..と言いたいところだが、俺も奴とやり合ったことはないからな。奴は普段東の砦を守ってて滅多に渓谷の西には現れない。一度お相手願いたいと思っているんだが』
シルバー『つまり..東の砦に行けば夜明けの騎士と一戦交えることになる可能性もある、と』
リリア『そういうことだ..最初にマレノア様の書状を持って砦に向かったレヴァーンも、やつと鉢あったんじゃねぇかって噂されてる』
グリム『レヴァーンってやつもリリアの話に出てくるよな。そいつ、何者なんだゾ?』
リリア『竜眼公レヴァーン。この国の外交任務の要だった男の名前だ。レヴァーンはマレノア様の目であり、手足であり..
夫でもあった』
『『!!!』』
ユウ『(てことは、ツノ太郎のお父さん、だよね?)』
シルバー『行方知れずになったという使節団を率いていたのは、まさか..』
リリア『そう、レヴァーンだった。奴は貴族だったし、特使としてこれ以上ない男だったからな。すぐに戻ると嫁と卵を残して野ばら城を飛び立ったきり..
本当に、どこをほっつき歩いてるんだか。あいつがいない間、誰が姫と卵の面倒を見なきゃいけなくなると思ってんだ。今回の遠征で、あいつの行方の手がかりを掴んで、姫に持ち帰ってやりたいところなんだがな..』
呆れ顔の中に不安な色を乗せた瞳が焚き火の炎を反射して揺れ動く。すると、今まで黙っていたセベクが肩をブルブル震わせ、その目に溢れんばかりの雫を溜めて泣き出した
セベク『...うっ、ふぐっ..!うぅっ!うぉおおぉ〜〜〜〜っ!!』
グリム『ふなっ!?なんで急に泣き出したんだオメー!?』
セベク『これが涙せずにいられるかっ!残された卵様と姫様とリリア様のお気持ちを考えたら..!』