第87章 *懐刀インパクト*
それは近衛兵たちと同じ鎧が服の切れ端とともに力なく転がされていて、リリアは眉間にしわを寄せてそっと手に取った
リリア『鎧に..動物を模した仮面。茨の国の使節団のものだ』
『..すごい、ボロボロ』
リリア『..鎧の持ち主がもうこの世にいねぇのは、間違いないだろ』
『...リィさん』
リリアをはじめ、近衛兵たちの見えないはずの表情にも悲しみが漂っているのがありありと分かり、どうしようもない感情がレイラを襲う
リリア『んなシケたツラしてんじゃねぇよ。行方不明の連中がこうなってるかもしれねぇって言ったのはお前だろ』
『ん..ぁ、なにか落ちてる』
リリア『使えるかもな。こいつの無念ごと拾って持っていくとするか。ーーー夜の祝福あれ』
側に落ちていた小物を拾うと、まるで追悼のように言葉を紡ぎ、サッと髪を翻して再び進行を開始した。近衛兵たちも思うところはあるものの、リリアの後に続いて足を動かした
『...』
ユウ『レイラ、僕たちも行こう?』
『ん』
静かに横たわる二度と蘇る事のない鎧の持ち主を想い、黙祷のように静かに目を伏せた
そして手を引くユウの手を握り返し、先に進んでいったリリアたちを追って歩き出した
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グリム『なあ〜、まだ着かないのか?さすがのオレ様も疲れてきたんだゾ。おい、ユウ。オレ様おんぶしろ!』
ユウ『えぇ〜..自分で歩いてよ』
グリム『ふなっ!?親分の言うことが聞けないっていうのか!?』
ユウ『僕はレイラの手を取るのに忙しいからね』
セベク『うるさいぞ、魔獣め!そこの人間も、しっかり面倒を見ておけ!』
バウル『お前も十分騒がしいぞ!もっと声量を落としたらどうだ』
『〜〜〜っ』
ユウ『あーうるさ。レイラ、大丈夫だからね』
リリア『それはお前もだろ、バウル。はあ..全員まとめて大人しくしろ。シルバーは極端に口数が少ないってのに。どんな親が育てたらこんな物静かに育つんだか』
ため息を吐きながら視線を向けられ、シルバーは少し瞳を揺らがせながら真っ直ぐにリリアを見つめ返した
シルバー『俺は..明るく賑やかな父に育てられました。厳しくも優しい、自慢の父です』