第87章 *懐刀インパクト*
取ってあげる、と手を伸ばし横髪に触れると、リリアは驚きはしたもののその手を払うことも嫌がることもなく、寧ろ少し腰を屈め取りやすいように頭を差し出した
『ん..と、取れたよ』
リリア『おう、悪いな』
『ん』
クルクルと指先で摘んだ葉っぱで遊びながら小さく笑う。その笑みにまたリリアの胸の奥が優しく撫でられる
リリア『..お前』
『ん?』
リリア『いや、何でもねぇよ。少し休憩したらすぐに出発する』
『分かった』
リリア『(胸がざわつく..なんだこの感覚。まさかレイラの黒兎としての力..いや、そんなわけがねぇ)』
ただ運動後による発汗のせいだ、と首を振ってその場を足早に離れた
?『.....』
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再び東へと進行していると、これまでの戦闘で近衛兵たちから"見込みがある"と褒めの言葉を貰ったセベクは、ある意味自分たちの先輩にあたる彼らからの称賛に心底喜んでいた
セベク『現役の方々に評価していただけるとは..彼らの期待を裏切るわけにはいかない。近衛兵となって、ドラコニアご一族にお仕えし、茨の国のため尽力する。うむ、理想の将来設計だ』
『(ゾクッ..!)この感じ..っ!雷さん、危ない!』
喜ぶセベクの"この世界(夢)にいたい"という想いに引かれ、深淵へと引きずり込む"闇"が彼の背後からズブズブと溢れ出した
誰よりも先に背中に走った寒気と共に気づいたレイラは、すぐさま氷魔法をセベクの後ろに放ち、バキバキと迫り上がった氷の盾が彼と闇を隔てる
セベク『はっ、僕は..』
シルバー『危ないところだったな。レイラ、よく気づいてくれた。
セベク、これは夢だ。油断すれば、より深い眠りに引きずり込まれるぞ!』
セベク『くっ..貴様に戒められるとは..この屈辱、すぐに晴らしてみせる!』
ペンを警棒に変え、言葉通り屈辱を晴らすかのように次々と闇を打ち払っていく
『ぁぅぅ..これ、嫌い。それに見てて気持ち悪い』
シルバー『あと少しだ、頑張れ!』
『ぅぅぅ..』