第87章 *懐刀インパクト*
シュワシュワ..と最後の闇が消えていき、レイラたちはようやく訪れた安堵に胸を撫で下ろした
セベク『よし、全て倒したぞ』
シルバー『...』
セベク『何か言いたげだな。今回は僕に落ち度がある。文句があるなら言ってみろ』
グリム『その前に、助けてくれたレイラに礼ぐらい言ったらどうなんだゾ』
腕を組みながらジトッと見つめるグリムに、"うっ.."と若干嫌そうな顔でグリムの隣でユウに撫でられているレイラを睨む
セベク『ふ、ふん!今回はたまたまだ。それにあの程度、自分で切り抜けることなど容易い』
グリム『はぁ〜?オメーさっき、"今回は僕に落ち度が〜"とか言ってたくせに。全然自分が悪いなんて思ってねぇじゃねぇか』
セベク『なっ..!くっ..』
グリム『ほら、さっさと言ってくるんだゾ』
セベク『..おい、人間』
『んへへ..もっと撫でて』
ユウ『うん、いい子いい子。よく気づいたね、偉いよ』
セベク『っ、おい!人間!!』
ユウ『わぁ!ビックリした..あのさ、そろそろ"人間"じゃなくて名前で呼んでくれる?どっちか分かんないし、相手に失礼でしょうが』
セベク『貴様らなど人間で十分だ!それよりそこの、兎のお前』
『..なに?』
セベク『その.......』
長い沈黙が続き、二人の間に微妙な温度の風が吹き抜ける。今まで言い争っていた分、素直に感謝を伝えるのがどうも難しく、セベクは視線を彷徨わせながら次の言葉をなんとか紡ごうとする
セベク『す、す...』
『.....いいよ』
セベク『え?』
『別に言わなくていい』
ユウ『レイラ..』
シルバー『素直じゃないあいつを見兼ねて、礼は言わなくても大丈夫だと思ってくれたのか』
グリム『あいつ、大人なんだゾ』
レイラの気遣いに3人はプチ感動し、穏やかな空気が5人を包み込む
セベク『貴様..』
レイラの言葉に遅れてプチ感動したセベクは、ユウの元へ戻るその背中にほんの少しだけ心を動かされた
だが、途中で足を止め振り向いたレイラの瞳は驚くほどに冷たいものだった
『誰かに言われてしょうがなく、"ありがとう"って言う人に言われても嬉しくないし』