第87章 *懐刀インパクト*
グルルルル..
『...』
グルル..ガァッ!!
『..おすわり』
ガアァァァァっ!!
『おすわり』
ガゥッ!!...グルル
冷たく感情の籠もっていない深紅の瞳に見下され、魔獣たちの背筋に冷たいものが走る。そして彼らだけにしか見えなかったが、自分たちを見下ろすレイラの背後から、黒くおぞましいウサギの形を模した"何か"が現れ、それが更に恐怖を煽る
ガ..キュ〜..
すっかり怖気づいた魔獣たちに殺気を消すと、近寄りその頭部へと手を置いた
『よしよし..いい子。もうこの街に入ってきちゃダメ。分かった?』
ガウッ!
通じるはずのないその言葉が何故か理解できたのか、魔獣たちはひと吠えするとレイラに頭を擦り付けて媚び始めた
『わわっ..んふふ、いい子。怖い思いさせてゴメンね。あの銀色の人たちのせいでここまで降りてきちゃったんだよね。私たちが追い出すから、もうここに来ちゃだめだよ』
グルルル..
『ん、バイバイ』
それぞれの頭を優しく撫でると、魔獣たちは真っ直ぐに山の方へと駆けていった
パチパチパチ!!!
その瞬間、街の妖精たちから盛大な拍手が起こり歓声が鳴り響いた
街の妖精『ありがとうございます!』
街の妖精『これで食糧が食い尽くされずに済むぞ!』
リリア『はっ。まあまあ使えるな、あいつ』
バウル『...(あの獰猛な魔獣を手懐けた、だと?あれも黒兎の力だというのか。もしそれが本当ならば..あの女は危険だ)』
街の妖精『本当にありがとう、お嬢さ..
!!そ、その黒い髪と赤い瞳..兎の獣人。まさか、あの黒兎様ですか!?』
『ぇ..あ、ん..』
その瞬間、歓喜の声がザワザワとしたどよめきへと変わる。ユウとレイラは、今までの経験から罵倒や罵声が来るのではないかと身構える
だが、それは杞憂だと言わんばかりに、妖精達からは先程の倍の拍手と歓声が湧き上がった
街の妖精『凄いぞ!あの強大な魔法使いの黒兎様が助けに来てくれた!』
街の妖精『私達妖精とはもう縁がないと思っていたのに、まさか会えるだなんて』
街の妖精『ドラコニアの加護と黒兎様の加護があれば、この街は安泰だ!!』