第87章 *懐刀インパクト*
リリアの指示で、捕らえられた鉄の者たちは他の近衛兵たちに連れられ森の奥へと消えていった
それを見届け暫く進むと、また進む先に鉄の者が先程より少人数で歩いているのが見えた
リリア『俺たちにはまだ気づいていない。闇夜に紛れて手早く追っ払うぞ』
バウル『はっ!』
『私がやる』
バウル『なっ、貴様!この俺を差し置いて、』
リリア『..いいだろう。見せてみろよ、黒兎サマ』
バウル『右大将殿..』
リリア『ぬかるなよ』
『ん』
ペンを強く握りしめ、後方で心配そうに見つめるユウたちに"大丈夫だ"と目配せし、1人鉄の者たちへと近づいていく
『...ふぅ..』
彼らの背後の大木に身を隠しながら、ペンに付いている魔法石へ息をそっと吹きかける
すると魔法石を介した吐息は風を生み、まっすぐにそよ風となって鉄の者達へと吹き込んだ
鉄の者『..なあ、この森ってこんなに熱かったか?』
鉄の者『いや、そんなことはないはずだが。確かに、なんだか汗ばんできたな』
突然周囲の温度が上がり、彼らの額に汗がにじむ。吹く風も熱を帯び、まるで熱帯夜を歩いているようだった
装備の鎧が体温を更に上昇させ、歩いているだけなのに次第に息もあがってきた
鉄の者『はぁ..はぁ..暑い』
鉄の者『一体、どうなってるんだ?くそ、熱くて頭がぼおっとしてきた』
鉄の者『とりあえず、1度休憩しよう..はぁ
え、うわあああああ!!!』
あまりの暑さに鉄の者たちは足を止め、その場で座り込んだ。その時を狙っていたように、レイラはペンを振り上げ、闇の手を繰り出し鉄の者たちを一人一人掴み上げた
鉄の者『なんだこれ!う、動けない!!』
鉄の者『妖精の仕業に違いない!早く振りほどけ!』
鉄の者『あ、頭がくらくらして..力が入らない』
『..ごめんね。でも、妖精さんたちの森を壊すのは、ダメ』
ゴンッ!!!ゴンッ!!!
鉄の者『がっ..!!』
鉄の者『ゔっ!!』
闇の手が掴んだ鉄の者たちの頭を互いにぶつけるように打ち付けた。硬い甲冑がより振動を大きく与え、脳振盪を引き起こし気絶へと追いやった
全員の気絶を確認すると、レイラは大木から姿を表し、彼らを静かに地面へと降ろした