第87章 *懐刀インパクト*
赤と黒の閃光の斬撃が四方八方に飛び交う。セベクとシルバーは魔法での遠距離攻撃と体術を組み合わせた近距離攻撃を仕掛けるが、右大将はそれを軽々と避けながら魔石器を振り回し二人を圧倒する
小柄な体躯を生かしたヒットアンドアウェイに翻弄され、4人はまともに攻撃できないでいた
グリム『ひぃ、はぁ..あいつ、なんてすばしっこいんだゾ!オレ様の魔法が全然当たらねぇ!』
『ふぅ..はや、い..』
後方で支援に回るレイラはその動きを止めるためと黒い闇の手を召喚し捕まえようとするが、素早い身のこなしに狙いが定まる前に逃げられてしまう
『っ..だったら..!』
魔力を集束させペンを振り上げると、上空が歪み数本の黒い槍が現れた。そしてペンを振り下ろすと同時に槍は右大将へと降り注ぎ、彼の周りを囲むように突き刺さる
右大将『!!』
シルバー『あれは!まさかレイラの魔法なのか』
突然頭上から周りに刺さり落ちた槍に驚くその一瞬の隙を狙い、黒い雷が槍から放たれ四方から右大将へと放たれた
バリバリバリバリ!!!
衝撃と舞い上がる砂埃で視界が不明瞭の中、なんとか槍まで近づき中を覗きこむ
逃げられないよう四方を囲み、確実に隙をついた攻撃に勝機を持っていたレイラだったが
『!!い、ない..』
そこには誰の姿もなく、虚しく残った黒雷が小さくバチバチと音を立てるだけだった
グリム『ふなっ!?誰もいねぇ!あ、あいつはどこに行ったんだゾ!?』
『絶対に当たったと思ったのに..
っ..!!??』
ゾクッとするような鋭い殺気が背後から迫り、考えるよりも早くレイラは振り向き、闇の手を伸ばした
すると素早い人影がその手を避けながら、一瞬にして目の前まで踏み込み、ペンを握る白い細腕をしっかりと掴んだ
『っ!!』
右大将『悪くはねぇが威力も発動も死ぬほど遅せぇよ。息巻いてた割には全くもってへなちょこだな』
『ぅぅっ..!(力、強い..っ)』
握る力はそこまで強くないのにも関わらず、振り払うことができず身動きが取れない
そんなレイラのもがきを鼻で笑うと、グイッと引っ張り耳元で低く囁いた
右大将『そんなもんかよ..
偉大なる黒兎サマの実力ってのは』