第81章 *閑話カームデイ10 〜ポムフィオーレメイン〜*
普段はどこか鋭さを感じるような彼の纏う雰囲気が、今はどこか穏やかで柔らかさを感じさせる。彼だけでなく、ルークやエペルにもそんな雰囲気が纏っていて、それも全て小さなウサギ1人の与えた影響である
『私、この寮にお泊りできてよかった。3人と一緒にいられて楽しかったし..その、好きな人同士になれて嬉しかった』
ヴィル『あら、その言い草だとエペルもあたしたちと同じって認識でいいのかしら?』
ルーク『ムシュー・姫林檎も同じ獲物を狙うライバル、というわけか。ふふ、これは増々油断ができないね』
二人の視線が一斉にエペルへと向けられる。鋭い視線にビクッと肩を跳ねさせるが、それが彼の負けん気に火を付けた
表情を引き締めると大股でレイラに近づき、その体を強く抱きしめて見せつけるように頬にキスをした
『『!!』』
『エ、エペル..//?』
エペル『こ、こういうことなので..先輩たちにも、ユウにも、他のやつらにも絶対負けねぇ!』
ヴィル『あら、そう。頬にキスなんて子供っぽい事しておいて一丁前に言うじゃない。未だに魔法の勝負で勝てないくせに、この勝負に勝てるなんて思ってるの?』
エペル『魔法はまだでもこっちの想いは負けてません。ぼやぼやしてたら、あっという間に差をつけますから!』
ルーク『ボーテ!!君の真剣な気持ち、そして宣戦布告..確かに受け取ったよ。私も二人に負けないように全力でアピールしていこう』
3人の間に争いの火花が散る。様子を見ていたレイラはハラハラするも、それが喧嘩の雰囲気ではないことに気づいて抱きしめるエペルの胸にそっと寄り添った
グリム『あーあ。面倒なのが増えちまったんだゾ。どーすんだ、ユウ?』
ユウ『そんなもん決まってるでしょ。こっちも宣戦布告、するっきゃない。
あーのー。3人で仲良くライバルになるのはいいですが、僕のこと忘れてませんよね?』
にっこりと笑いながらエペルの腕からレイラを掻っ攫うと、ドヤ顔で腕に閉じ込める。気持ちよさそうに大人しく収まるレイラに、3人の視線が鋭さを増して注がれる
ヴィル『そうね。あんたが1番のライバルだったわ』
ユウ『(どやぁ!)』
睨み合いは暫く続き、オンボロ寮へ歩き出したのは数十分後の事だった