第81章 *閑話カームデイ10 〜ポムフィオーレメイン〜*
〔ルーク〕
レイラくんの体が倒れていく
体の拘束は既に外れていて、私はすぐに立ち上がって走り出し、彼女を受け止めることができた
ルーク『レイラくん..』
抱きとめた体にはもうあの禍々しいオーラはなく、細く華奢な体が腕の中で穏やかな寝息を立てていた
私のせいだ。私がVDCの時に彼女を裏切ってしまった。そのことがこんなにもこの子の心を砕いて、ノアくんにあそこまで好き勝手にさせる原因になってしまったなんて..
これからどう接していけばいいんだろうか
今まで通りにしていいのか、それともこれ以上心身の負担を掛けないように距離を置くか
出来れば離れたくはない。もっと知りたいことや触れてみたいこと、そして伝えたいことだってある
だが彼女の今後のことを考えれば..
『ん..ぅ..』
ルーク『!..起きたかい?』
先ほどとは全く違う温かく優しさと美しさを持つ深紅の瞳が、ゆっくり開かれた瞼の奥で揺れる
腕の中で目覚めた彼女は、私の顔を見るなり泣きそうな顔でぷるぷる震えだした
『ご、ごめんなさ、い..』
ルーク『何故君が謝るんだい?』
『だって、私っ、ルクさんに酷いこと..!』
ルーク『違う。君は私に酷いことなんてこれ1つもしていないさ』
少しパニックになっているようだ。落ち着かせるために出来るだけ優しく語りかけ、頭から頬にかけてゆっくり撫でる
ルーク『君は悪くない。悪いのは、ノアくんをあそこまで好き勝手させる原因を作ってしまった私だ』
『そんなことない!私が悪いの。私が、弱くて悪い子だから..っ』
腕の中で震え、静かに涙を流すその姿は、やはり先程までのノアくんとは全くの別人だ。彼女はこんなにも他人のことで心を痛め涙を流せる優しく温かい人だというのに、ノアくんはそれを利用しようとする
『...私、いつか化け物になっちゃうのかな..?』
ルーク『そんなことは絶対にさせない。私やヴィル、エペルくん..なにより、ユウくんが必ず君を守ってみせる』
勿論他の寮の人たちも、と付け加えて抱きしめる力を強めると、服をギュッと握り静かに彼女は"ありがと"と呟いた
彼女を抱えたまま立ち上がりペンを拾うと、私は月に背を向け屋上テラスを後にした
月はもう赤くなかった