第81章 *閑話カームデイ10 〜ポムフィオーレメイン〜*
ポムフィオーレ寮・屋上テラス
寮の最上階に作られた広い屋上テラスの真ん中にノアは立っていた。星が瞬く夜空を見上げて青白い大きな満月をうっとりと眺める
『[今日はもう疲れきってるから、ボクを押しのけることなんて出来ないだろ。そのまま中から大人しく見てなよ]』
内側で嫌がるレイラに微笑みを崩すことなく、寝間着のポケットに手を突っ込むと、コロンと音を立てながら、手にあるものを掴みながら取り出した
開いた手のひらに収まっていたのは、タルタロスの最下層で拾ったブロットの石たち。夜の闇にも負けない黒々とした表面は、月明かりに照らされ鈍い光を放っていた
『[ああ、こんなにもいっぱい持ち帰れるなんて夢のようだ。これを見つけてから、早く食べたいと何度思ったか..ようやくだよ]』
1つ指で摘むと月にかざしうっとりとした様子で眺めると、口を開いて石を飲み込もうとした
しかし、なぜか途中でその動きを止め、石を睨みつけてため息一つ吐いた
『[前よりかは小さめだけど、さすがにこの大きさでも飲み込もうなら喉が破裂しそうだ。かと言って噛み砕けるほど柔らかいものでもないし]』
出来ればこの手の上に転がってる石たち全てを一気に取り込んで満足感に浸りたい。そんな思いが過ぎり、一度片手に全て収めるとグッと力を込める
すると、石はひとりでにふわりと浮かび上がり、互いに吸着して1つに融合し始めた
そして1つの大きな塊となったブロットはその質感を変え、硬い岩のような状態から靄がかかった液状の球体へと変化した
再び手の上に収まると、ノアは口の端を上げてそれを口元へ近づけていく
『[うん、これならいけそう。じゃあ、いただきまーす]』
口を開き、ブロットを飲み込もうとする。その時、
『[!!]』
何者かが音もなく駆け寄り、ブロットを飲み込もうとするノアの腕を掴み上げた
?『何を、しようとしてるんだい?』
その声は僅かに震え、掴み上げる腕にも震えが走っていた。見つめるその瞳は、驚きと悲しみと僅かな怒りが滲み射抜くような視線が真っ直ぐに貫く
『[あぁ、よりによってキミにバレちゃったか]』
いきなり掴まれことに最初は驚いたノアだったが、振り返った先にいた人物に気づいた瞬間、ニイッと笑みを深めた