第81章 *閑話カームデイ10 〜ポムフィオーレメイン〜*
『『『....』』』
『こんな感じ、なんだけど..』
レイラの口から語られた黒兎の歴史と自分の過去。それはまるでおとぎ話のようで微妙に現実感のない内容に、ヴィルとエペルは飲み込んで理解するのに少しばかり時間を要した
一方、ルークは黒兎の歴史自体は知っていたが、その中に隠れた真実やレイラの過去の傷の深さを改めて知ると、胸が張り裂けそうな痛みが走る
ヴィル『..まるでお芝居の中の話ね。だけどこれは現実で起こった話、紛れもないこの世界の歴史の1つ』
エペル『レイラが、そんな黒兎の末裔ってことだよね』
『ん..怖くなった?』
エペル『そんなわけない!レイラは優しくて強くて..絶対に恐ろしい人じゃないって僕達は分かってる』
ルーク『その通りさ。黒兎がどんな人物だったなんて、先程の話や君自身を見ていれば一目瞭然だよ』
ヴィル『あんたみたいなお人好しで、無茶ばかりして、ちょっと天然な感じだったんでしょうね』
3人の優しく温かい言葉と笑みがレイラの強張った体を解いていく。受け入れてもらえたことに目頭が熱くなるが、なんとか我慢してさっと指で拭った
ヴィル『あんたの中にいるノアってやつには少し気をつけなきゃいけないだろうけど、今は黒兎とあんたの話を聞けただけでいいわ。
...レイラ、話してくれてありがとう』
エペル『僕からも、ありがとう』
ルーク『君にとってはツラい話をさせてしまった。だけど信じてほしい。今の話を聞いてもなお、私達は君の味方だよ』
『...ん、嬉しい..あり、がと..』
ヴィル『あら、もしかして泣いてる?』
『泣いてない、もん』
深紅の瞳が潤んでいることに全員が気づいていたが、そっぽを向くレイラの意地に免じて、これ以上は追及しなかった
ヴィル『そういうことにしておいてあげるわ。さあ、暗い話はここまで。今からあたしたちが贈った服、一通り着てもらうわよ』
エペル『あっ、じゃあ僕はこの辺で..』
ヴィル『あら、あんた用にも色々化粧品を揃えたんだけど?』
エペル『ま、また今度でいいです!!失礼します!』
このまま残ることの危険を誰よりも知っているエペルは、一目散に頭を下げて部屋を逃げるように出ていった