第77章 *第1タワー Ⅱ*
背中を任せられる。たった一言だったが、エペルのモチベーションを上げるのには充分だった。自分の力が認められ、この中で最も実力のあるヴィルの背を任されるという大役に、丸く大きな瞳はキラキラと輝きを見せた
エペル『あっ、そうだ。レイラチャン、大丈夫だった!?突き飛ばしてごめん。あまりに必死過ぎてつい..』
『ううん、大丈夫。助けてくれてありがと..ごめんね、気づけなくて。もっとちゃんとしてたら林檎くんの迷惑にならなかったのに』
エペル『迷惑だなんて思ってないよ!レイラチャンに怪我がなくてホント良かった』
『ん..』
ユウ『どうしたの?やっぱりどこか痛い?』
浮かない顔を覗き込んで問いかけるが、レイラは無言で首を横に振った
ルーク『...』
『(もっと、しっかりしないと..)』
その後、ケージを何個も開けてはファントムを倒し、中を確認するが、キーは一向に見つかることはなく、体力の消費と共にファントムとの連戦に全員の魔力の残りが尽きかけてきた
ヴィル『...!!』
『あ..』
エペル『うわっ!急に立ち止まってどうしたんですか、ヴィルサン?』
急に足を止めたヴィルにぶつかりそうになるが、ギリギリのところで止まることができたエペルが問いかけると、静かに腕を横に伸ばし静止の合図をかける
ヴィル『しっ..話し声が聞こえる。レイラ、あんたにも聞こえてるでしょ』
『ん..』
?『..キレイなドレス..あタしニ、チョウダい..』
しゃがれた女性のような声が反響して広がるように全員の耳に届いた
ルーク『女性の声..?いったいどこから?』
『(探さなきゃ..集中..集中しないと..早く、見つけて、)』
必死に耳を動かし声の主であるファントムの位置を探そうとするが、雑念・焦り・疲労で上手く特定が出来ない
そしてその必死さが、上から来るファントムの襲撃に気づかなかった
ルーク『レイラくん、危ない!!』
ザシュッ...!!
『ぇ..』
次の瞬間体が温かいものに包まれ、肩越しに見えたその人物の腕をファントムの爪が弧を描き切り裂いた