第76章 *第1タワー*
見張り番・ユウ
エペル『一人で大丈夫?もしファントムが襲ってきたら、』
ユウ『その時は全力ダッシュと大声でみんなを呼ぶから』
ヴィル『あんたのそういうところ、嫌いじゃないわよ』
ルーク『その時はすぐに駆けつけるさ』
ヴィル『...』
ソファーに腰掛けると、横で眠っているレイラをチラリと盗み見る。先程から一度も目を覚ますことなく、穏やかな寝息を立てる姿に、少し小馬鹿にしたような笑みで、顔にかかった横髪を優しく払う
ヴィル『間抜けな顔..今がどういう状況が分かってんのかしら』
小さな手に自分のを重ねると、反射行動なのかキュッと握られる。その愛らしさに胸がくすぐられ、手を握り返した
目を閉じて温もりに浸っていると、レイラとの日々が不意に脳内を駆け巡った
"私、毒の人嫌いじゃないよ?"
"あの..ありが、と.."
"毒の人、やっぱりキレイだなって"
"お願い、戻って..元の貴方に戻って。お願い..ヴィルさん..っ"
"ヴィルさんのこと、好きだから.."
ヴィル『..必ず、必ずあんたは何があっても無事に学園へ返す。勿論あたしも一緒に帰ってみせる。そうしたら..』
『んぅ..』
ヴィル『!!..起きた?』
身じろぎのあと瞼がゆっくりと開かれ、上から見下ろすヴィルと目が合う。すると安心したようにへにゃりと顔を緩めて、繋がれていた手に頬を寄せた
『おはよぉ』
ヴィル『おはよう、寝坊助。次の見張り番はあんたなんだから、途中で寝こけないようにしっかり意識起こしておきなさい』
『ん..』
むくりと上半身を起こすも、まだ眠いのかフラッと体を傾かせヴィルの肩に寄りかかる
ヴィル『こら、言った側から..はぁ、もう..』
呆れてため息を一つ吐くと、柔らかい頬を摘んで軽く引っ張った
ヴィル『レイラ』
『んいっ..なに、ヴィルさ...』
その瞬間、体が硬直した。頬を引っ張られ顔を上げた直後に、自身の額の髪が伸びてきた指先で退かされ、肌に直接柔らかく温かい感触があったからだ
ヴィル『ほら、これで目が覚めたでしょ?』
口の端を意地悪げに上げると、目の前の愛らしい頬が真っ赤に染まっていくのが見えた