第76章 *第1タワー*
ヴィル『ふん。あいつらがただの親切でヒントをくれるはずないわ。あいつらはあたしたちをチェスボードの上で転がして、暇つぶしをしてるだけ..暇つぶし?いいえ、違う。これは、恐らく..』
ブツブツと呟くヴィルだったが、突然他のケージがガタガタと動き出し、中からおぞましいファントムの声がいくつも聞こえ始めた
?『ヴヴヴ..ヴガアアアア!!!』
『ぅっ..ヴィルさん、早くここ出よ。ここにいたくない』
ヴィル『そうね。行くわよ!!』
今にもケージを破って出てきそうなファントムたちが見え、ヴィルたちは急いで出口の扉へと向かい、手に入れたカードを使って収容所から脱出することにした
S.T.X.Yタルタロス-非常階段
ヴィル『ふぅ..なんとか無事に切り抜けられたわね』
ルーク『ケージの中で目覚めていたファントムは、どれも小さな個体ばかりだった気がするよ』
エペル『うん。あれくらいなら僕でも楽勝..かな!』
ヴィル『油断しないで。ファントムは収容されている階層が深いほど厄介な個体が多いと聞いてる。気を引き締めていきましょう。それにここにきて分かったことがある』
『なに?』
ヴィル『この島全体のコントロールを掌握したあの兄弟でも、ファントムの凍結を一気に解除することはできないってことよ』
ユウ『確かに。それができてたらとっくに僕らの負けだった』
ヴィル『そう。昨日、研究所の職員が、ファントムをタルタロスから搬出してテストする場面に出くわしたの。そのアナウンスの内容からして、恐らく収容所内部には、凍結を解除する設備がないんだと思う』
『??』
ヴィル『例えるなら、タルタロスは巨大な冷蔵庫。解凍できる電子レンジは冷凍庫の中にはないんだわ』
エペル『そっか。じゃあ今は冷凍庫の電源を抜いて、中身が自然解凍されるのを待ってる感じ..かな?』
ヴィル『ええ。つまりはあいつらも今は動きたくても動けない状況なのよ。ゲームだなんだとふざけた言動でこちらを惑わしてくるけど、その実..あたしたちを足止めして時間稼ぎをしたいんじゃないかしら』
ルーク『要するに、イデアくんたちも余裕があるわけではない。ということだね』