第73章 *海上フライト*
ルーク『トリックスターは監督生として、兎の君は同じ寮生としてグリムくんを迎えに来たのさ』
イデア『わざわざ言い直すなよ。聞こえてるに決まってるだろ。嫌味だよ、嫌味..
いるよね、実力もないくせに、ヒーロー気取りで感情に任せて突っ走る迷惑なやつ。君らと違って僕は忙しいんだよ。おサムい友情ごっこに付き合ってるヒマは..い"っだ!!』
突然髪が引っ張られる痛みに悲鳴を上げ、慌てて後ろを振り向くと一瞬黒い何かが視界の下に下がっていくのが見え、合わせて視線を下げると、黒い手のようなものが地面に消えていくのが見えた
イデア『は?な、なに今の!?手みたいな..ホラー?』
オルト『違うよ兄さん。一瞬だったから全部は解析できなかったけど、明らかに魔法で生み出されたものだった。そしてその魔力の大元は、レイラ・フィリアスさんの物だね』
イデア『マ?』
オルトの解析に目を見開いてレイラを見ると、眉間にシワを寄せて明らかに怒った表情で足を軽くタンと鳴らす兎が睨んでいた
ユウ『レイラ..』
『だってユウのことバカにした気がしたもん。お月さま、あんまり好きじゃない』
イデア『怒ってる顔も可愛..じゃなくて、君、自分の状況分かってんの?今すぐカローンに君を攻撃させることも、海の中に放り出すことだって出来るんだけど』
『[その前に君を頭から食いちぎって魚の餌にしてあげるよ]』
『『『えっ...?』』』
普段レイラの口から出ないような言葉に、一同が驚愕に包まれる。一瞬、妖しく光った深紅の瞳に寒気にも似た感覚が背を走った
『..え?あ、なに?』
エペル『レイラチャン、今..あれ?気のせいだった?』
ユウ『今の喋り方..』
『なに..?みんなどうしたの?ユ、ユウ..っ』
突然の変わり様に周りの空気がシン、と静まり返る。唯一ユウだけは先程のレイラの雰囲気に見覚えがあり嫌な予感がした
しかし、何故周りの人間に驚きの視線を向けられているのかが分からず、オロオロと自分に助けを求めるように見上げる瞳に、ユウは優しく微笑んで震える小さな体を抱きしめる
ユウ『大丈夫だよ。なんでもない、なんでもない。みんな、レイラが闇の手を出したのにびっくりしただけ』