第3章 とけていく
「ボクはね!ホントのホントーに村人なのー!」
ニコニコな笑顔で人差し指を上に上げて言う紅葉に
「うるせーよ!そんなに明るいゲームじゃねーだろ」と頭を殴る。
「夾がブッたー」と泣きだすがそれを気にするものは誰もいない。
「俺も村人だよ」
「俺も…善良な、村人」
「僕も村人ですよー」
「私も村人だよ」
由希、潑春、紫呉、ひまりが言い終えると全員の視線が一気に夾に向いた。
「ちょっ。なんだよ!!お、俺だって村人なンだよ!!」
「あと4分だ」
はとりが腕時計をチラリと見たあと、すぐに手に持っていた本に視線を戻した。
今日は数日前に紅葉が企画していると言っていた『おかえりパーティー』なるものを紫呉宅でやっていた。
昼から紅葉、潑春、そして無理矢理連れてこられたであろうはとりがお菓子やジュースをたくさん持ってやってきたのだ。
そして今は紅葉が最近ハマっているらしい"人狼ゲーム"の真っ最中。
村人2、騎士1、占い師1、狂人1、人狼1の配役で居間の机を囲んでやっていた。
因みにはとりはゲームマスター(進行役)だ。
現在、この中で誰が人狼なのか、誰を吊るすのかの話し合い中。
全員が身の潔白を証明しようとしている。
「このままじゃ埒が明かないから、もしも自分が人狼だったら誰を噛み殺すかーって質問に全員答えない?」
「なにその縁起でもない質問」
紫呉が名案とばかりに言ったが、ひまりは引いたように顔を引きつらせている。
だが、確かにこのままでは全員が自分は村人と主張するだけで時間が終わってしまう。
満場一致でそれぞれが答えることにした。
先陣を切ったのは夾。
「俺は紅葉だな。うっせーから」
それゲーム内容と関係ないじゃん。と笑いながら次に答えたのはひまり。
「私は…紫呉かなぁ。頭キレるし残したくない存在かも…」
「たしかに。俺も紫呉かな。」
「先生…場乱すの好きだし…敵でも味方でも…厄介」
ひまりに続き由希と潑春が答えると、紫呉は汗をたらーと流して「もしかして僕、初回あうと?」と笑いながらも口を歪ませていた。
「じゃあねー!ボクはねー!ひまり!可愛いから食べちゃいたいのー!」
笑顔の紅葉の頭をまたうるせェと夾が殴ったのは言うまでもない。