第7章 ベール
自室に戻ったひまりは、荷物の前に胡座をかいて伸びをすると片付けを始める。
修学旅行あっという間に終わっちゃったなー…とシミジミとしながら机の上でお土産の仕分けをしていた。
本当にあっという間だった。
時間の流れの速さに憂いを含んだ笑みになる。
楽しかった。楽しかったけど…寂しい。
コンコン
ノック音に顔を引き締めて「どうぞー」と声を掛けると現れたのは夾。
自分から訪ねてきたくせに、気まずそうに部屋に入ってくる夾に、小首を傾げて数回瞬きをしながら「どうしたの?」と用件を問う。
「あー…いやー…」
「なによ?」
煮え切らない態度にひまりの不信感は更に募る。
頸を片手でさすりながら「えっと…」と、今度は視線までをも逸らしだす夾にひまりの不安は膨らんでくる。
「あー…お前さ、1日目の…アレ、聞こえてたか?」
「…アレ?ってなに?」
1日目と言えば夾が告白されてた現場のこと?それとも透君との2人でいたときのこと?
"聞こえてた"の心当たりが有りすぎるひまりは上を向いたり斜め下を向いたりと忙しなさそうに記憶を辿っている。
その深刻ではなさそうな彼女の態度に、安堵したように胸を撫で下ろすと「いや、分かんねーならそれでいい」と机を挟んでひまりの前に座った。
勝手に疑問を投げかけられ、勝手に自己完結されたことにムッとした顔で「ちょっと気になるんです…け…ど?」と文句を言おうとしたが、ドンと目の前に乱暴に置かれた白く小さな箱に気を取られて語尾を小さくしながら疑問形に変えていく。
これなに?と視線で夾に問うと、「いいから開けろ」と恥ずかしそうに机に頬杖をついてそっぽを向いた。
頭にハテナを浮かべながら箱を開ける。
「えっ……これって…」
中身を見てひまりは驚きで目を見開きながら、口元が自然と上がっていくのが自分でも分かった。
シルバーに輝くクローバーをモチーフにした小さなソレに見覚えがある。
「土産もん屋で見つけたから…やるよ。片方分しか無かったけど」
「ありがとう!夾!嬉しい…ふふっ。ありがとう」
ドキドキと高鳴る鼓動。
ひまりは嬉しくてそれをギュッと握りしめた。
そんなひまりの姿に「そんなんでそこまで喜ぶのな。お前」と夾も口元を緩めていた。