第7章 ベール
「透君知らない?最近CMでよく流れてるよーっ」
「そのような歌があるのですね!生憎私は流行りというものに少々疎くて…はなちゃんはご存知ですか?」
「どうかしら…聞いたことあるような無いような…。透君は仕方ないわよね。夏休み中も働き詰めだったんだもの。ありさも知らないんじゃない?」
「あたしは聞いたことあんぞー。バイト先のファミレスでよく流れてっからなぁー」
新学期が始まった教室。
ホームルームさえ終われば今日は授業もなく帰るものもチラホラと見受けられる。
だが、ある一角では全く帰る気配がなく、話に花を咲かせている4人の女子がいた。
その光景を椅子に雑に座った夾と数人のクラスメイトが眺めている。
「…アイツ今日が初めての癖して、なんであんなに馴染んでんだ?」
「ひまりちゃんも偉く整った顔してんだなー。何?草摩一族ってチートな訳?俺らにも分けろぉー!その容姿を分けろぉー!モテたいんだぁー!」
「モテたい!ぁあ!モテたい!!」
夾の服を掴んで縋り付いていたり、頭を抱えながら嘆いてたりするクラスメイトを夾は気怠そうに睨みつけている。
夏休みが明け、転入してきたひまりは最初こそ緊張しているようだったが、
「なにアンタも草摩なのかよ?ってことはアレか?物書きんとこに住んでんのか?」
「うんそうだよー。紫呉のとこでお世話になってる」
「ははっ!なんだよ!あの家はテラハかなんかか?」
「ちょっと待って、私も本田さん?の話聞いた時テラハかよってなったんだけど」
と、本田透の友人の魚谷ありさと会話したことがキッカケで、花島咲を交えた4人ですぐに打ち解け始めた。
そして正にガールズマシンガントークが繰り広げられており、帰ろうと思っていた夾は仕方なくひまり達の熱が冷めるのを待っているところである。
「そーいや、王子はどこ行ったんだー?」
「…王子って?」
「あら、ひまりは知らないの?草摩由希が王子って呼ばれてること…」
「何それっ!詳しくっっ!」
「由希君はとっても人気がある方で王子様って呼ばれてますよ!ファンの方もたくさんいらっしゃるのです!」
「それで!!登校時に女子達の視線に殺されるかと思ったの私!!」
そう、それは今朝。
由希と夾とひまりの3人で登校してきた時のこと。